無数の兵士から滝へと追い詰められた老女が自分の命とひきかえに守った赤ん坊は、滝の下に住む村人に救われる。シヴドゥと名付けられ、たくましい青年に成長した彼は、外の世界に憧れ、巨大な滝を上るが、そこで運命的に出会った美貌の女戦士アヴァンティカに恋をする。彼女の一族が暴君バラーラデーヴァが君臨する王国と戦い続けていることを知ったシヴドゥは、戦士となって王国に乗り込むが、そこには王国に25年もの間囚われている実の母がいた。そして自分こそがこの国の王子バーフバリであることを知る…。
インドの伝説の戦士バーフバリの活躍を描くスペクタクル・アクション「バーフバリ 伝説誕生」。インド映画の興収記録を塗り替えたという評判のエンタテインメントは、ハエを主人公にした快作「マッキー」のS・S・ラージャマウリ監督によるアクション大作だ。数奇な運命に導かれた孤児が、実は自分は王子だと知り、蛮族に略奪された王国を取り戻すため、戦いに身を投じるというのが大筋。堂々のR15指定作品なので、首や腕が飛び、血しぶきが舞うなど、戦闘シーンはかなり激しい。セピア色のトーンの画面は、旧約聖書のモーゼを描いた「エクソダス:神と王」や、ギリシャ神話を題材にした「インモータルズ」を思い起こさせるものだ。神話的世界観の英雄伝説を描くのに、CGやスローモーションを多用して、迫力と荘厳さを演出している。だが、そこはやはりインド映画。突如、極彩色の画面に切り替わり、歌とダンスが挿入されたり、コミカルなシーンがひょっこり現れるなど、インド映画らしさをきっちりと踏襲しているのが嬉しい。主人公が一人二役を演じるのもお約束だ。バーフバリは、ヒーローとして覚醒したら、勧善懲悪に向かって迷いなしのフルスロットル。ハリウッドのアメコミ・ヒーローのように、うじうじ悩んだりしないのが潔い。そしてもちろん美女とのロマンスも。ヒロイン役のタマンナーは“ミルク・ビューティー”と呼ばれる人気女優で、ナチュラルな美貌が売りの美女だ。天女が舞い踊るシーンは、まるで夢のような異世界へと誘ってくれる。それにしてもこの波乱万丈、荒唐無稽な物語が“たったの2時間18分”とは、インド映画も随分と洗練されたものだ。昔だったらゆうに4時間はかかるシロモノである。ちなみに本作は本国インドでの大ヒットをうけて続編も待機中(ただし、現時点では続編の日本公開は未定)。英雄伝説は止まらない。
【60点】
(原題「BAAHUBALI: THE BEGINNING」)
(インド/S・S・ラージャマウリ監督/プラバース、ラーナー・ダッグバーティ、タマンナー、他)
(スケール度:★★★★☆)
この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2017年4月20日の記事を転載させていただきました(アイキャッチ画像は公式Facebookページから)。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。