続・パチスロ不正の話と業界の将来などについて

宇佐美 典也

ども宇佐美です。
前回に続きパチンコの話です。ちょっと今回は長いです。

まずは前回のパチスロのサブ基板不正の記事に関して業界の方から多数意見いただきまして、その内容を踏まえて私なりに意見を考え直したところがあるので、その話から始めます。そもそも私はサブ基板の不正問題に関して

①パチスロでは本来法律上メイン基板にしか出玉性能を持たせてはいけないのに、パチスロメーカーが一部出玉性能をサブ基板に持たせた

②サブ基板はこれを狙った不正改造事件が頻発するようになった

③不正基板の開発には開発情報と技術が必要で様々な人間が絡んでいる。メーカーや卸売業者が関係している可能性も一部で指摘されている

④2013年〜2014年に大規模不正が活発化した時は、そうした背景を無視して運送業者がスケープゴートにされた

というように捉えていたのですが、これに関して大きく二つの指摘がありましたようです。

まず1点目はサブ基板が不正改造の対象と狙われたのは「セキュリティが甘いから」ではなく、「取り締まりが難しいから」とのことでした。メイン基板は法律上出玉性能と直結しているので、これが不正改造の対象となった場合、警察が刑事事件としてすぐに摘発できるのに対して、サブ基板は形式的に出玉性能と直結してないため不正基板にすり替えられても摘発が難しくなります。このような現実と法律の矛盾をついてサブ基板の不正が横行したとのことです。なお重要なサブ基板の物理的なセキュリティはメイン基板と同等程度のようです。

続いて2点目は不正基板の開発、すり替えの構造についてですが、様々な主体が絡んでいることは間違いありませんがその構造は一筋縄ではいかないようです。例えば「外部者が遊技機の移動時にROMの情報を引っこ抜いて外部のプログラマーをやとって目的を明かさず改変をさせる」というような形式を取れば、メーカーから直接的に開発情報を得ずとも情報を入手可能で、プログラマーの罪も問いずらい、ということになるようです。なおメーカーの関与に関してもサブ基板にタイマー機能を仕込んだ通称「アイス」疑惑なども囁かれています。

この辺り踏まえてサブ基板不正に関する認識を修正しますと

①パチスロでは本来法律上メイン基板にしか出玉性能を持たせてはいけないのに、パチスロメーカーが一部出玉性能をサブ基板に持たせた

②サブ基板を対象にした不正改造は(本来出玉性能とは関係なはずなので)摘発が難しく、この隙間を狙って不正改造事件が頻発するようになった

③不正基板の開発には開発情報と技術が必要で様々な人間が絡んでいる。その構造や方法はかなり複雑化しており、メーカーや卸売業者が関係している可能性も一部で指摘されている。

④2013年〜2014年に大規模不正が活発化した時は、こうした背景から最小限の対応として運送業者のみを摘発した

というようなことになります。

。。。とまぁここまで(重要ではあるものの)細かい話をしてきたわけですが、私としてはパチンコ業界の人たちとこうした遣り取りをするにつれ、なんとも言えない複雑な気持ちになっております。

私自身としては決してパチンコが嫌いというわけではなく、大学〜社会人時代を通じて断続的ながらパチンコユーザーであり続けてます。ただ最近は、脱法的な手法で無理やりギャンブル性が上げられる一方、肝心のゲーム性がおろそかにされているような気がして足が遠のき、たまにジャグラー打つ程度になっており「この業界なんかおかしくなってるな」と感じています。

そういう中で2年半前にギャンブル依存症問題を考える会の田中紀子さんと出会って、活動を支援するなかで大っぴらにパチンコ業界批判を始めたわけですが、私は過激なことを言っているようで、業界に対して「ちゃんと法律を守れ」という当たり前のことを言ってきたつもりです。そして「脱法的な手法を続けてきた以上、その結果責任としてのギャンブル依存症問題にきちんと向き合え」と。

あくまで私はパチンコユーザーとしてギャンブル依存症問題を考える会を支援しているつもりで、一応は業界の将来の貢献したいと思っています。果たしてパチンコ業界の人たち、特にメーカーや全日遊連、はこのままのやり方で業界に将来があると思っているのでしょうか???

・なぜメーカーはファン離れが続いているのに、脱法的な手法で射幸性をあげることに固執するのか?

・そのくせメーカーは違法行為が判明したらホールに責任を押し付けて逃げ切ろうとするが、それは業界全体の体力を弱めることに繋がると思わないのか?自分さえよければなんでもいいのか?

・射幸性に頼った機械開発を続けて必然的に遊技人口が減って一人当たり消費額が増えたわけだが、その結果として当然拡大したギャンブル依存症問題に関しては責任を感じないのか?本当にリカバリーサポートネットワーク一辺倒の支援でギャンブル依存症罹患者側が納得すると思っているのか?

・ホールが釘を叩くのは営業上仕方ない面もあり風営法の運用が実態に即していないことは否めないが、ホールの業界団体である全日遊連はなぜその状況を改めるべく制度改正を構想し、行政に働きかけなかったのか?

・こうした業界がお先真っ暗な中で日遊協は21世紀のパチンコ業界の姿をなぜきちんと議論しないのか?

私は一ユーザーという立場を超えているかもしれませんが、それでも少なくとも”かつてパチンコを愛したもの”としてこういうところは疑問に思わざるを得ないわけです。私は小学校の同級生たちと今も仲良くしているのですが、中学・高校と疎遠になった地元の同級生たちと私をもう一度繋いでくれたのは紛れもなくパチンコとゲーセンでした。

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(http://www.nichiyukyo.or.jp/FileUpload/files/magazine/201409/01_leisure.pdf より)

私は優等生よろしく小学校ではどちらかと言えばいじられたりイジメられる側でしたが、赤坂のエスパスやサントロペやオリエンタルパサージュでおっかなびっくりかつてのいじめっ子たちと再開し、そのうち肩を並べてパチンコを打つようになり思い出を語りながら一緒に酒を飲むような関係になったのはまぎれもなくパチンコのおかげでした。あのころのパチンコは「ちょいワル」の共通言語だったような気がします。それが今ではパチンコは「ちょいワル」ですら忌避する遊びになりつつあります。スマホの普及などの外部要因もありますが、20代の参加率がとめどもなく下がっているのはその証左でしょう

私はギャンブル依存症問題を考える会のアドバイザリーではありますが、これでもパチンコの再興を願っているつもりではあります。

まもなくギャンブル依存症対策基本法案が国会で議論されることになりますが、どうか業界の方々はこの機会に21世紀のパチンコのあり方について真剣に議論を重ねて欲しいものと思います。

ではでは今回はこの辺で。


編集部より:このブログは「宇佐美典也のblog」2017年4月20日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は宇佐美典也のblogをご覧ください。