4月18日に次のようなニュースが流れました。『無免許運転アナ 諭旨解雇に 静岡第一テレビ「再発防止にあたる」』。これは、静岡第一テレビの報道制作局アナウンス室所属のアナウンサーA氏(27)が、今月1日に道路交通法違反(無免許運転)の疑いで現行犯逮捕、送検された事件を指します。18日付けで諭旨解雇の懲戒処分を行ったと公表されました。
また、アゴラでも人気の、荘司雅彦弁護士の記事「弁護士の懲戒歴を調べよう」も話題になっていたので、僭越ながら、私は人事コンサルタントの立場で「解雇」について論じてみたいと思います。
ネットで結構な話題になっていますが、「解雇」について混同している記述があるので、簡単に整理をします。解雇は使用者による労働契約の解除です。解雇は一般的に「普通解雇」「整理解雇」「懲戒解雇」の3つに分類されますが、諭旨解雇は「普通解雇」「整理解雇」には該当しないことから、懲戒解雇にしぼって説明をします。
諭旨解雇と懲戒解雇の違いは、諭旨解雇は最も重い処分である懲戒解雇に相当する程度の事由がありながらも軽減した措置のことを指します。懲戒解雇は労働者にとって死刑判決ですが、諭旨解雇は使用者と労働者の双方が話し合い解雇処分を受け入れるものです。
今回は弁護士を交えて話し合いがされたことが推測できます。諭旨解雇であれば退職金が支払われることがありますが、懲戒解雇の場合は原則として退職金などは支給されません(退職金規程の記載が必要)。しかも、懲戒解雇の場合は「賞罰有り」と記載しなければいけません。「重責解雇」(労働者の責めに帰すべき重大な理由による解雇)だからです。
懲戒解雇されるとその後のキャリア形成は困難になります。どんなに優秀でも、「賞罰有り」の人材を採用する会社は少ないでしょう。さらに、履歴書未記入で面接時に説明しなくても離職票に「重責解雇」と記載されますので再就職は困難になります(離職理由の番号でほぼ100%特定できます)。
離職票は、雇用保険などの切り替えにも必要になるので告知をしなくても判明します。仮に、その場をしのいだとしても、告知義務違反として経歴詐称で解雇理由に当てはまります。真実を知っていたら採用されなかったであろう重大な秘匿は解雇が有効とされる判例が多くあります。
もし、解雇という場面に遭遇したら、労働問題に強い弁護士に相談することをおすすめします。「普通解雇」「整理解雇」であっても、一定の要件を満たさなければ認められないことが多いからです。「懲戒解雇」は前述の通り重大な処分です。果たしてそれが正しいものなのか、ルールの則ったものなのか検証する必要があります。
参考書籍
『本当にあったトンデモ法律トラブル』(著者:荘司雅彦/幻冬舎新書)
世の中には、突然、身に降りかかる法律トラブルが存在します。その一つに労働問題があります。出社したら解雇を告げられて「寝耳に水」というケースが少なくありません。本書では今日にでも降りかかるかも知れないトラブルの事例が分かりやすく紹介されています。
尾藤克之
コラムニスト
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