今こそ「朝銀に1兆4000億円投入」の闇を解明すべき --- 山田 高明

寄稿

私たちは今、北朝鮮の核や弾道ミサイルから命を脅かされている。

これらの大量殺戮兵器の開発を人材と資金面で支えたのが朝鮮総連であり、とりわけ資金面に関していえばその傘下の朝銀が大きな役割を果たしてきた。

(関連記事:北朝鮮の核・ミサイル開発の資金源を担った朝鮮総連と朝銀

それゆえ、今後これらの兵器で日本人が虐殺される事態が発生すれば、その戦争犯罪行為に対して、彼らは直接的に責任を負わねばならない。

ただし、その責任者ないし共犯者には、日本の政治家も含まれる事実を忘れてはならない。「同じ日本人」であり、かつ誰よりも国民の生命財産を守る立場にある「政治家」でありながら、金銭その他の目的のために、独裁国家に同胞の命を売り渡した行為は、当然、総連や朝銀の朝鮮人以上に、とうてい許されるものではない。

冷戦終結後、核・ミサイル開発に邁進した北朝鮮

1993年3月、北朝鮮はNPT(核拡散防止条約)を脱退し、同年5月には日本海に向けて初の「ノドンミサイル」の発射実験を行った。以降、北朝鮮が核とミサイルの開発に力を入れている事実は公然のものとなった。

ちなみに、1994年10月、北朝鮮が核開発を凍結する代わりにエネルギー支援などの見返りを与えるとする「米朝枠組み合意」が締結されが、北朝鮮がその後も秘密裏に核開発を継続している事実は、複数の脱北者の証言からも確認が取れていた。

1998年8月、北朝鮮は中距離式の「テポドン」を発射した。ミサイルは日本列島をまたいで太平洋側に落下したため、国内は騒動になった。本土に落ちる危険性も十分あったわけで、“人工衛星”などと擁護する者たちが続出したのは異様と呼ぶほかなかった。もっとも、後に北朝鮮自身がミサイルであることを隠さなくなったが・・。

このように、当時から北朝鮮が核とミサイル兵器の開発に尽力していること、及び朝鮮総連と朝銀がその資金源を担っている事実は、よく知られていた。ましてや“国政政治家”ならば知らないはずがない。このことを承知して以下に進んでほしい。

合計1兆3600億円もの公的資金

1997年、「朝銀大阪」が破綻した。それに対して3100億円もの公的資金が投入され、京都・奈良・兵庫・滋賀・奈良の各県朝銀が合流して、新たに「朝銀近畿」に変貌した。「現代コリア」佐藤勝巳氏によると、この3100億円の投入は、当時、自民党の大物だった野中広務の「面倒見てやれ」の一言で決まったという。

周知の通り、野中は金丸・小沢なき後の自民党で最高レベルの実力者であり、森喜朗の総理就任にも主導的役割を果たしたとされる。拉致被害者の家族に対して、「あんた方が吠えても横田めぐみは帰ってこないんだよ!」などと暴言したことでも有名だ。

ところで、この新生「朝銀近畿」は、早くも2000年に二次破綻した。それで再び3256億円もの公的資金が投入され、救済されることになった。

しかも、1999年、東北、関東、中部、中国、九州地方の朝銀も一斉に破綻した。地方ごとに整理統合が行われ、それぞれ莫大な公的資金で救済されていった。たとえば、関東各県の朝銀は統合され、4107億円もが投入された。

このようにして、最終的に2002年度までに、約1兆3600億円もの公的資金が、朝銀およびその受け皿の朝鮮系信金へと投入され、救済が図られた。

朝銀の異常な経営実態と異常な救済

今にして思えば、こういった救済措置は何重にも異常であった。

すでに実態が暴露されている通り、朝銀は独立した金融機関ではなく、朝鮮総連が人事権を握る下部機関であった。そして毎年、朝銀の集めた何百億円という資金が本国へと送金され、金正日政権の核・ミサイル開発資金へと化けていた。

そもそも信金の「預金者保護」などという瑣末な問題と、国家の命運を左右する安全保障問題を同列に置くこと自体が異様だ。政治家や官僚がその優先順位の区別がつけられない時点でどうかしているか、仮に救済するにしても、対日兵器の開発の資金源になる可能性を察知したら、別の救済の仕組みを考えればすむ話である。その際、預金者本人を照会するだけで悪名高い朝銀の仮名口座・架空口座を弾くこともできよう。また、ついでにどれだけ脱税が行われてきたのかという闇も解明できよう。

しかも、朝銀の破綻の場合、通常の金融機関の破綻とは根本から異なっていた。朝銀は裏で異常な活動をやっていた。最初に北朝鮮本国へ送金するという目的があった。ただ、それは公表できないので、たとえば商工人に多額の融資をするというふうに、帳簿上は事業融資に見せかけていた。もちろん、その金(の何割か)は送金に消えていくわけだから、最初から不良債権を作っているのと同じである。

こういった「預金」にせよ、より直接的な「寄付」にせよ、実態は独裁政権とその出先機関の朝鮮総連が、まっとうな商売をしている多数の在日朝鮮人を搾取するシステムでもあった。その対象となった彼らは、報復が怖くて大半が泣き寝入りした。

もちろん、商工人といえども、何時も景気がいいわけはないし、打ち出の小槌を持っているわけでもないので、朝銀の預金はどんどん穴が開いていく。そこで、バブル崩壊後によくあった、通常の不良債権問題を装って、国民の税金で穴埋めさせたのである。だが、これは本来、経営ミスというより、故意の事案である。

つまり、これは「詐欺」と評したほうが正確だ。むろん、被害者は「預金保護」という名目で金を騙し取られたわれわれ納税者である。

安倍総理に「パンドラの箱」を開く覚悟はあるか?

このように、1兆4000億円もの税金を支出した朝銀救済は、「預金保険」の仕組みを悪用した計画的な詐取・詐欺であったと考えられる。

だが、この件がそれ以上の政治的意味を持つのは、朝銀の送金が今、核とミサイルに化けて日本国民の生命と財産を脅かしているからに他ならない。しかも、救済時につぎ込んだ大金も、その後にどれだけ化けてしまったか、分かったものではない。だから、朝銀救済は実質、日本向けの大量破壊兵器を開発する独裁国家への「施し」だった。

それゆえ、日本人の政治家が関与していたとすれば、極めて悪質な利敵犯罪であり、その責任も在日朝鮮人の比ではない。ただ、野中広務が本当に口利きしたのか、したとしたら、どこまで関与したのか、今の段階では不明瞭で断言はできない。

慎重に証拠を固める必要があるが、あくまで「仮に」朝銀に1兆数千億円をつぎ込んだ下手人が野中だとすると、彼は将来「アジアを破滅に導いた男」と非難されるだろう。というのも、野中といえば、尖閣諸島問題で中国側に筋違いな“謝罪”をして、南シナ海での中国軍の増長を招いた張本人だからだ。つまり、この男は、南シナ海で第三次世界大戦の発火点を作り、朝鮮半島で核戦争の火種を作ったというわけだ。

彼はアジアの平和のために尽くしてきたつもりだから、何とも皮肉な話である。

また、与党内の大物政治家の中には、北朝鮮関係者から裏金を貰ったり、女性接待を受けたりした者が少なくない。そうやって事実上の賄賂を享受し、弱味を握られて、北朝鮮の国益のために働いてきたわけだ。しかも、結果的に日本人を大量虐殺する兵器の開発に協力した格好だから、単なるスパイや裏切りでは済まされない利敵行為だ。

さらに、アメリカがまさに北朝鮮にトドメを刺そうとした期間、なんと時の総理大臣とアジア大洋州局長が金正日政権をかばった疑いすらも考えられる。

常識では考えられないような異常な政治の腐敗がそこにはある。

おそらく、日朝“戦後”には、私たちは改めてこれらの「過去」と向き合うことを余儀なくされる。「なぜ私たちは自分たちを殺そうとする悪者を助ける自殺行為をしてしまったのか?」という自問自答を、必ずや懺悔と共にする羽目になる。

それは換言すれば「戦後平和主義の敗戦」だ。

だが、自民党に自浄作用があるのか? 安倍総理に腹をくくって身内を斬る度胸があるのか? 自身の闇を暴いて、大物政治家をさらし首にできるのか?

仮に処罰できなければ、安倍政権どころか、自民党が崩壊する。しかし、勇気をもって自身の病巣を切除すれば、その大手術的効果は必ず支持率に反映されよう。

(フリーランスライター・山田高明 個人サイト「フリー座」