産経新聞が4月19日付で「大学定員増を東京23区で認めず 有識者会議が報告書骨子案」と報じている。東京での大学新増設を抑制する一方で地方大学への支援を強化する方針を今年の『骨太方針』に反映させるというのが記事の要旨である。
記事のもとになったのは官邸の「まち・ひと・しごと創生本部」に設置された「地方大学の振興及び若者雇用等に関する有識者会議」が4月18日に議論した『検討の方向(案)』である。この中では地方大学に対して、「特色」を求めた大学改革・再編、地方創生に貢献するガバナンス強化、地方での役割・位置づけの強化、地域の生涯学習・リカレント教育への貢献、企業研修のニーズへの対応を求めている。その一方で、東京の大学新増設を抑制する方針で、この部分が記事の見出しになった。
有識者会議に同日に提出された『基本資料』は地方大学の窮状を示している。2002年度以来、東京圏と愛知県・京都府・大阪府で大学入学定員の増加が著しい。都会の大学への入学が容易になった結果、12県(山形・福島・茨城・富山・長野・岐阜・奈良・和歌山・鳥取・島根・香川・佐賀)では、自県内への進学者は2割未満となった。各県の大学入学定員を各県からの大学進学者の数で割った大学進学者収容力を見ると、東京都と京都府は200%程度と突出し、一方、長野県・三重県。和歌山県は40%を切っている。
有識者会議の方針が『骨太方針』に反映されれば、法改正が必要なわけではないから、東京の大学の定員増加は直ちに困難になるだろう。
この『検討の方向(案)』を読んでわからないことが一つあった。それは次の表現である。
市場原理から生ずる失敗に対しては、行政が介入する余地がある。
大学の新増設は文部科学省の許認可事項である。市場原理に基づいて大学を新増設したくても、文部科学省が認めなければ不可能である。したがって、文部科学省という行政組織の失敗に対して、有識者会議は、その先では『骨太の方針』は介入しようとしているわけだ。首都圏への一極集中は最近始まったことではないのに、文部科学省の許認可に反映されてこなかったのはなぜか。有識者会議には行政の失敗についての分析を求めたい。