4月27日に『デジタル社会における楽しい働き方』というシンポジウムを開催した。登壇者4名を含め総計97名と満席に近く、タイトルの通り時に笑いが起きる楽しいシンポジウムとなった。デジタルを標榜したシンポジウムであったが、当日はアンケート用紙を用いてアナログ形式で参加者の意見を集めた。この記事では印象深い意見を紹介する。
時代遅れの社会システムを改革すべき、という声が数多くあった。「公務の世界でもデジタル化は進められているが、最後にそれを紙に印刷して整理・保管するという馬鹿なことが行われている。」という指摘があった。「公文書を保管するとは紙で保管すること」という公務員の習性が背景にある。対面行政とハンコ行政からの脱却を求める指摘もあった。印鑑についてはシンポジウムでも話題になり、3Dプリンタで簡単に実印が複製可能になったという時代変化に対応できない行政に批判が挙がった。
教育についての指摘も多かった。初中等教育では「10年前と社会が変わっているのに20年前の教育をしている。」という批判が挙がった。これからの未来を担う子供たちには、デジタル社会の仕事観を養う教育を与えるべきであるという意見もあった。社会人教育についても意見があった。デジタルの波に乗って副業をはじめ、それを起業に結びつける積極的な人々がいる半面、この波に取り残されている人々もいる。取り残され人工知能(AI)に仕事を奪われると恐れるのではなく、AIと協業する社会を実現するために、社会人教育の機会を提供する必要性が強調された。都会と地方との情報格差についても同様の指摘があった。
「デジタルで互いの苦手を補い合うマッチングの場を作れば、起業が容易になる。」という前向きの意見が出た一方で、競争の中で強者に富が集中することへの懸念、ヒトの独占欲と協調性のバランスのとり方についての指摘もあった。社会人教育には、できる人とできない人の距離を縮める効果が期待できる。マイナンバーによる所得の捕捉を徹底するために、国費でマイナンバーカードを全員に配布すべきという意見もあった。
「ひとつに依存するから、複数に依存するように徐々に自己変革し、最後には独立したい。」「まずは自分が楽しい働き方を選ぶことが肝心。」といった自ら動こうとする声も出た。面白かったのは「昔からのやり方をしている人たちを『有識者』としてあがめない。」という意見。確かに、審議会などを含め、古くからの人々が幅を利かせているところがある。それらを打ち破り、社会全体が変化を恐れなくなることが大切である。
売上額のような数値に加えて、AIにはない人間らしい創造性や協調性を定性評価するように企業の人事評価を変えてほしいという声もあった。その先には、人材の流動化を受け入れる企業と社会が生まれ、個人が自分の時間をできる限り自分でコントロールできるようになる。一方で、雇用が流動すると失敗する人も出る。人々に再度チャレンジする機会を与える社会的なセキュリティ対策を求める意見も出た。
経済社会がデジタルをフルに活用する時代を受け入れ、それに向かっての社会的、あるいは個人的な備えを強調する意見が大半であった。参加者は暗い未来ではなく、明るい未来を展望して楽しみにしていた。