28日に米商務省が発表した第1四半期の実質国内総生産(GDP、季節調整済み、年率)速報値は前期比年率0.7%増となった。2014年の第1四半期以来3年ぶりの弱い伸びにとどまった。GDP全体の約7割を占める個人消費が成長鈍化の主因になったが、これは2016年10~12月期の個人消費の伸び率が3.5%となったことによる反動もあり、また暖冬による消費減少が主な背景ともされている。
28日に米労働省が発表した1~3月期の雇用コスト指数は、季節調整済みの前期比で0.8%上昇となった。これは2007年10~12月期以来の大きな伸びとなり、市場予想も上回った。賃金・給与は0.8%上昇(前期0.5%上昇)。諸手当は0.7%上昇(前期0.5%上昇)。通年(昨年4月~今年3月)では前年比2.4%の上昇となった。
1日に発表された3月のPCE物価指数は0.2%の下落となり、2016年2月以来のマイナスとなった。前年同月比では1.8%の上昇に。変動の大きい食品とエネルギーを除いたコア指数は前月比0.1%下落と2001年9月以来のマイナスとなった。前年比では1.6%の上昇。
GDPの弱い伸びが一時的な要因によるものかどうかは、今後の改定値等も確認する必要はあるが、雇用コスト指数を見る限りFRBの年内の3回程度の利上げの可能性は維持されよう。PCE物価指数は前月比でマイナスとなったものの、物価の基調に大きな変化はないとみられる。今週2日、3日にFOMCが開かれる。今回は利上げは見送られ、現状維持が予想されている。しかし、議長会見が予定されている6月のFOMCにおいて、利上げを決定する可能性は高い。その後の9月のFOMCでも利上げを決定した上で、12月のFOMCでは保有国債の償還分の再投資の停止を決定するのではと予想されている。
28日に欧州連合(EU)統計局が発表した4月のユーロ圏消費者物価指数(CPI)速報値は、前年同月比1.9%の上昇となり、予想も上回った。エネルギー価格の上昇などが寄与した。欧州中央銀行(ECB)は中期的なインフレ率目標を2%をやや下回る水準に設定しており、ほぼその水準にある。また、食品とエネルギーを除くコアインフレ率は1.2%の上昇と2013年9月以来の高水準となった。3月の0.8%を上回り、こちらも市場予想を上回った。
4月27日のECB政策理事会では金融政策の現状維持を決定した。会見でドラギ総裁は景気の下振れリスクは一段と後退したとの認識を示したが、インフレに関しては慎重な姿勢を崩さなかった。しかし、4月のCPIを見る限り、それほど懸念する必要はなさそうである。ECBは6月の政策理事会で、金融緩和策の解除に向け文言の変更を検討していると報じられていた。5月7日のフランス大統領選の決選投票の結果次第の面もあるものの、今回のCPIを見る限りにおいて、その可能性もないとは言えない。
編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2017年5月2日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。