最近、EQに関する記事を数回投稿した。その影響だろうか、マネジメントに関する執筆依頼があった。アゴラの影響もあるのだろう、多くの人は私のことを「コラムニスト」だと思っているようだがこれは本業ではない。なお、EQに関する商品開発などは、数年前まではお請けしていたが最近はお断りしている。
EQを私に伝授してくれた人がいる。今回も、インタビューに答えていただく、高山直(株式会社EQ/取締役会長)氏とは、EQJAPANという組織で、高山氏が代表取締役、私はソリューション部門と戦略部門を統括する責任者としてEQ普及につとめてきた。アゴラの記事が、高山氏の目にとまったことが10年振りに連絡をとる契機となった。
■EQのキモは「ヤマハメイト」にある
――ここで、皆さんに質問がある。相手や周囲の雰囲気が停滞気味だったり、テンションが下がっている状況を改善するには何が効果的だろうか。実は、熱い言葉が効果的である。
「周りが熱くなるような言葉を使ってテンションを上げるのが良いでしょう。わたしのいう熱血語は日本の高度成長峙代に使われた、いわゆるオジサン言葉のことです。日本が本当に元気のある時代にこういう言葉が使われていました。最近この言葉を使うと古いとかオジサン臭いとか言われますが、これに若い人は反応してきます。」(高山氏)
「食いついてくるということは確実に相手にインパクトを与えているのです。これは訓練だと思って使ってみましよう。オジサンと言われたら『じゃ、あなたの熱血語は』と切りかえすと彼らからは代わる言葉は出てきません。」(同)
――古き日本のよき時代を思い出す言葉には、どのようなものがあるのか。
「かくいうわたしは、そんな昔の人でもないのです。でもあの当時の記憶があり、それは楽しい時代の記憶で、そのなかで聞いた言葉なので、しっかりといまでも覚えており、使うと元気がわいてきます。うちの社員に朝『オッパヨー』(“おはよう”のことです)と大声で出社してくる社員がいます。」(高山氏)
「最初は『朝からうるさいなあ~』なんて思っていましたが、毎日これを聞いているうちに、言葉で目覚めている自分に気づきました。彼に熱くさせられているのです。今では『オッパヨー』とその彼に感謝しています。」(同)
――以前、次のようなことがあった。失注し落ち込んでいる営業マンに「早く結果がわかって良かったな!」「失注しても死ぬわけじゃない!」と労う高山氏。マネジメントの立場からすると「冗談じゃないよ!」と思いながらも、誰かを攻め立てたり、足を引っ張る組織ではなかったので雰囲気は非常に良かった。
そして、そのような雰囲気は顧客にも伝わるのだろう。日本を代表する電器メーカーA社で大型コンペがあった際のとき(20社くらい呼ばれていた)。「御社のような会社になりたいので、全てお願いします!」と、当時では考えられないような金額のプロジェクトを任せられたことがある。私はこれを「高山マジック」と称した。
「言葉で相手はかわります。組織もかわります。古い言葉だけでなく、周囲や相手を熱くさせる言葉を自分で開発してください。若い社員、女性社員には最初嫌がられるかもしれませんが、訓練です。乗り越えて開発してください。」(高山氏)
「わたしは最近『ヤマハメイトだね』をよく使います。オチは『ノツテル、ノツテル、ノツテル』です。熱血語を使った誉め言葉のつもりなんですが。」(同)
■言葉の重要性を理解しよう
――本日(5/17)、Amazonで「EQ+書籍」と検索すると、15766件がヒットする。EQは広義の言葉ではあるが、間違った解釈の書籍が多いことに気がつく。著名なベストセラーもあるので驚きだ。ある時期にヒットしやすい単語と考えられていたのだろう。
もし、私がEQを一言で答えてくれと聞かれたら「包括的な人間関係構築能力」と答えるだろう。EQは人間関係の形成時に大きな影響を与える。さらに、仕事のアウトプットに影響を与えるのも人間関係である。
EQJAPANという組織は、EQ理論提唱者のイェール大学のピーター・サロベイ博士(第23代イェール大学学長)、ニューハンプシャー大学教授のジョン・メイヤー博士との共同研究をおこなっていた唯一の研究機関である。
残念なことに、EQブームのあとに出現した商品(検査、研修、書籍など)の多くは、理論を無視した稚拙なものが多かった。私自身は現在、EQを推進する活動はしていないが、誤った解釈が広まることを憂慮している1人ではある。
参考書籍
『EQ「感じる力」の磨き方』(東洋経済新報社)
尾藤克之
コラムニスト
<アゴラ研究所からお知らせ>
―2017年5月6日に開講しました―
第2回アゴラ出版道場は、5月6日(土)に開講しました(隔週土曜、全4回講義)。
「次回の出版道場に、1年前にトランプ勝利を予言した、渡瀬裕哉氏が登壇」。