前回の書評がかなり反響があったのでもう一冊セルフコンディショニングの本を紹介。
4年前の新書だが個人的にはメンタルケアの著作としては本書がベストだと思う。マネジメントする側と自身でケアする側の双方から解説してある良書だ。
世の中には「愚痴ばかり垂れる人」と「文句ひとつ言わず黙々と頑張る人」がいる。と書くと後者の方が信頼できると思う人も多いだろうが、著者によれば必ずしもそうではないという。前者は職場の課題を逐一見つけて報告してくれる便利な存在であり、マネージャーの調整次第でどうとでもなるものの、後者のようなタイプはある日突然心が折れたりブチ切れたりするパターンにはまりやすいためだ。
なぜ、辛抱強い人ほど突然変調をきたすのか。感情(特に怒り)を受け流すことなく溜め込んでしまう人は、膨大なエネルギーを浪費することになる。たとえば、仕事上のささいなミスの記憶を繰り返し脳内で再生することで、ダメージは何倍も蓄積され、ある日突然爆発することになる。
マネジメントで防ぐ方法もあるにはあるが、一番確実なのは自分で上手く感情をコントロールすることだ。本書にはそのためのテクニックがいくつも書かれているが、個人的に印象に残ったのは「俯瞰的な視点」を意識することだろう。自分の理想のキャリアデザインからすれば、目の前のイライラなんてものはたいていは笑って流せるレベルの話であるはず。
ジョブズの「今日が人生最後の日だとしたら、今日の予定は本当に自分がやりたいことだろうか?」という視点にも通じるものがある。ジョブズは切れまくってたじゃないかとかいうツッコミは無しだ(笑)
編集部より:この記事は城繁幸氏のブログ「Joe’s Labo」2017年5月16日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はJoe’s Laboをご覧ください。