中途半端な多言語での行先表示

京浜急行の行先案内板が「面白い」と聞いていたので5月16日に確認に出かけた。案内板には、およそ40秒の間に、日本語→英語→中国語→日本語→英語→韓国語の順番で行き先が表示される。韓国語で表示した瞬間を写真に撮った。

行先表示板には二つの問題がある。一つは、表示言語がわからない旅客には行き先が伝わらないこと。理解できる言語が表示されるまで待たなければならないが、その間に電車を乗り過ごすかもしれない。中国語や韓国語しかわからない旅客は最大40秒の待ちを強いられる。

第二の問題は中途半端。写真を見れば気づくように「普通」「快特」といった列車種別は日本語のままだ。英語・中国語・韓国語を使う旅客は、降車駅に止まらない電車に乗り込んでしまうかもしれない。行先表示板の一番右には備考欄があるが、ここは行き先が日本語表示なら日本語に、それ以外の時には英語になる。これも中途半端である。

観光庁は「観光立国実現に向けた多言語対応の改善・強化のためのガイドライン」を2014年に公表した。ガイドラインは案内系の表示については日本語に英語を併記するのを基本ルールとしている。そのうえで、「外国人の来訪者数や誘致目標等、施設特性や地域特性の観点から、英語以外の表記の必要性が高い施設」について「中国語・韓国語・その他の必要とされる言語」での表示を求めている。行先表示板のように切替により外国語を併記する際は、「伝えるべき情報量、外国人の利用実態等を考慮し、適切な内容・頻度・言語でこれを実施することが望ましい。」とも規定されている。

京浜急行の行先表示板は「適切な内容・頻度・言語」という条件を満たしているのだろうか。列車種別や備考は適切な内容に入れなくてよいのか。40秒間に日本語2回、英語2回、中国語1回、韓国語1回は適切な頻度なのか。

2014年と現在で大きく変わったことが一つある。それは自動翻訳技術の進歩である。スマートフォンを行先表示板にかざせば、Google翻訳で日本語や英語から韓国語に瞬時に変換できる。旅行客は全員スマホを持ち歩いているのだから、行先表示板は、基本ルールの通り、日本語と英語の併記だけにしてもよいだろう。