北米ではロシアゲートが猛威を振るい、ダウが372ドル安と年初来で最大の下げ幅で取引を終えたのは17日のことでした。
トランプ米大統領の弾劾までまことしやかに囁かれるなか、懸案の医療保険制度改革(オバマケア)税制改革をはじめ税制改革、規制緩和、インフラ投資拡大が立ち後れる懸念が台頭していますよね。
オバマケア代替案をめぐっては米下院で可決済みなだけに、次の主戦場は米上院。既に共和党から健康・教育・労働・年金委員会の委員を中心に13人の有志が上院版の代替案を立案中で、8月の成立を目指すと伝えられています。ニューヨーク・タイムズ紙が批判していたように、13人もいる!というのに全員男性です。
ミッチ・マコーネル(ケンタッキー)
オリン・ハッチ(ユタ)
ラマー・アレクサンダー(テネシー)
マイク・エンジ(ワイオミング)
ジョン・スーン(サウスダコタ)
テッド・クルーズ(テキサス)
マイク・リー(ユタ)
トム・コットン(アーカンソー)
コリー・ガードナー(コロラド)
パット・トゥーミー(ロードアイランド)
ジョン・バラッソ(ワイオミング)
ジョン・コーニン(テキサス)
ロブ・ポートマン(オハイオ)
こうしてみると、南部が目立ちますね。低所得者層向け公的医療保険(メディケイド)拡充に関する、この地図を覚えていますか?レンガ色の19州はメディケイド拡充を見送り、上記メンバーの13人中で8名(赤字の州)がこれらの選出です、しかもテキサス州やユタ州などからは2名そろって参加しています。上院には女性が5名存在するものの、トランプ大統領指名の閣僚候補に楯突いたコリンズ議員など中道左派寄りの議員も含まれ選出されませんでした。
ロシアゲートで揺れるワシントンD.C.にて、この13人が知恵を絞ってオバマケア代替案を練り上げ中。トム・プライス厚生長官は「8月の休会まで」に成立すると予想していました。税制改革の成立こそ8月までだったのではないかとツッコミたくなるのを堪えつつ、動向を見守りたいところです。
米国で吹き荒れたハリケーンが、今度は南米を直撃しました。
ブラジルです。2016年8月に弾劾裁判で罷免されたルーセフ前大統領に代わり就任したテメル大統領に大スキャンダルが襲いかかりました。現地のオ・グローボ紙によると、収賄の目撃者をカネで黙らせることを承認したというではありませんか。贈収賄の疑いでテメル政権の官房長官をなど閣僚のほか、与党幹部を含む100人近くが捜査中という空前の事態にあってこのニュースが飛び込んだため、ブラジルのボベスパ指数はフリーフォール中。あっという間に10%以上も急落してしまいました。
iシェアーズ MSCI ブラジル・キャップト ETF(EWZ)は1日で20%近くも暴落し、弱気相場に接近する有様です。レアルも、対ドルで一時6%沈みました。
5月もあと残すところ1週間半になって、まさに「5月に売り逃げろ」の展開となってきました。アメリカ大陸の大国で混沌と化した政局は5月をまたいでも収束しそうになく、市場をボラティリティは今後益々増してくることでしょう。
(カバー写真:Antonio Thomás Koenigkam Oliveira/Flickr)
編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2017年5月18日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。