【小池新党の可能性】小池知事代表就任・若狭氏離党届

高橋 亮平

小池知事が都民ファーストの会代表に就任

政界がまた賑やかになっていきそうだ。

今日、小池知事が都民ファーストの会の代表に就任する。
多くの方からすれば、「小池知事=希望の塾=都民ファースト」と認識されていて、むしろ「何を今更」と思う方もいるかもしれないが、この事が政界にとっては大きな影響を及ぼすかもしれない。

都議選に向けて、少し下がってきたとはいえ未だに高い小池知事の支持率と、一方でなかなか上がりきらない都民ファーストの支持率を結びつけるため、今回の小池知事の代表就任を起爆剤にしたいというのが、最も大きな要因だろう。

もう一つ背景にあるのは、東京都知事特別秘書も務める現代表である野田数氏に対するメディア報道への対策だろう。既に、週刊誌はじめ一部メディアから指摘されているが、こうした週刊誌による報道はこの後も数発の弾があるとされており、こうしたメディア対策もあるともされている。

都民ファーストの予定候補に民進党からの離党組が割合的に多くなってきた事もあり、小池氏自らが代表になる事で、保守票を掘り起こしたいとの思いもあるかもしれない。

代表就任は支持率上昇の起爆剤になるか

図表: 小池知事・都民ファースト・自民の支持率

出典:日経新聞世論調査から筆者作成

先日から、メディア各社などから支持率についての報道があった。
多少の差はあるが、どの報道においても、大方の傾向は変わらなかった。

日経新聞のデータをもとに見てみると、まず小池知事の支持率がこの1ヶ月で14Pも落ちているという事、そうは言っても未だ63%と極めて高い支持率である事。

自民党は横ばいなのに対して、都民ファーストの会は微増で差を詰めているものの未だに自民党が10Pも高いという事。

こうした中で、注目が集まるのが、小池知事の支持率63%と都民ファーストの会の支持率21%との差42Pをどれだけ縮められるかという事になっているのだ。

背景には未だ「都民ファースト」という名称も含めてまだ浸透しきれていないところにあり、小池知事は自ら代表につく事で、自民党を一気に抜き去ろうと考えているのだろう。

小池知事は自民党籍をどうするのか

小池新党については、都知事選の前からその可能性について触れてきた。
都知事選の最中にも高橋亮平(一般社団法人政治教育センター代表理事・NPO法人 Rights代表理事・元中央大学特任准教授・元市川市議・元市川市長候補)コラムでも、『政治と金で知事2人辞職、知事選3回150億円使っても東京都は「利権構造」を解決できないのか』を書き、その中で、「小池氏は当選すれば、自ら党首となって「小池新党」シナリオと、都議会自民党と手打ちをして「安定都政運営」シナリオを両天秤にかけ、大阪のように一気に転換できそうなら「新党」、そこまでいかなさそうであれば「手打ち」と選択していくのだろう。」と指摘した。

まさに、小池氏がその党首になるわけだ。

次の注目点は、小池知事が自らの「自民党籍」をどうするかだろう。
自民党席については、これまで小池知事は、進退伺を自民党側に出しているとしてきた。
この対応をどうするかは大きな分岐点になりそうだ。

若狭議員は都民ファーストを応援するとして自民党に離党届を提出

小池知事の代表就任の意向との報道とほぼ同時に、自民党所属の若狭勝 衆院議員が、都議選において都民ファーストを応援するにあたって、自民党に進退伺を提出したと報じられた。

その後、党内の批判などもあり、さらに2日後の5月31日、若狭氏は自民党に離党届を提出した。
自民党の二階幹事長は慰留せず、離党を認めるかどうか検討するとのことだ。

小池氏が知事になったことで生じた東京10区の衆議院補選の時もそうだったが、若狭議員の対応は素早く、常に先手先手を打った形になっている印象があり、今回も完全に自民が受け手となって後手の対応を取らざるをえない状況になってきた気もする。

自民党としては、代表就任となった小池氏の自民党籍と含めて考えて行かなければならず、難しい宿題を課せられる形になった。

これまでの旧来型セオリーで考えれば、都議選前に離党届も受け取らず除名ということだろうが、都議選前にどれだけ小池知事との対立構造を鮮明にするか、また自民党都連とは対立構造になりながら、官邸とは連携を模索していくシナリオも言われていた事もあり、官邸との今後の関係も含めてどう対応するかは注目である。

個人的には、自民党は預かりとしてこの辺りは曖昧にしたまま都議選に突っ込む可能性もあるのではないかとも思っている。

いよいよか国政政党としての「小池新党」立ち上げか

ただ、気になるのは、表向きには、若狭氏は離党届を二階氏に持っていく直前に小池氏にも報告したと報じられているが、この行動は、小池氏の党籍の問題に飛び火することは明らかな事から、事前に綿密に打ち合わせた上での対応であることは明らかであり、そう思うと、小池知事は、自民党を切る方向で一気に舵を切ったのではないかとも考えられる。

そう考えると、浮かんでくるのが、国政政党としての「小池新党」の可能性である。
少なくとも今回の離党届の提出で、実質、若狭議員は無所属議員の位置付けになる。
政党要件の5人を満たすためには残り4人が必要になるわけだが、こうなってくると政界的にはきな臭くなってくるのではないかと予想する。

まず、即名前が挙がるのは、先日民進党を離党した長島昭久 議員だろう。
長島議員が離党した際には自民党都連会長の下村博文 議員が秋波を送っていたが、長島議員の選挙区である東京21区には自民党現職の小田原潔 議員がいる。

かつてはコスタリカみたいな事がありえたが現実的には厳しい。
離党当初に言われたように小池知事との連携という方が自然の流れのように見える。
長島グループと言われていた国軸の会のメンバー、特に事務局長の鷲尾英一郎 議員などはこれまでも小池新党の候補としてメディアなどでも上げられる事があった。

現在は役員室長という立場がら難しいかもしれないが、柿沢未途 議員も小池知事とは近く、小池知事は知事就任後、都民ファーストのどのメンバーよりも先に柿沢議員のパーティにゲストとして参加していたりもする。

都議選をめぐる民進党の離党ドミノを見ていると、フェーズが国政新党になった途端に雪崩を打つ可能性はある。

全く同じタイミングで政党の政策顧問をやめた「あのキーマン」

都民ファーストの会 東京都議団の音喜多駿 幹事長はじめ、上田令子 都議、両角譲 議員の3人が知事選当初から小池知事を応援していたことは知っている人も多いと思うが、この3人ともが実は元みんなの党の候補者として受かった都議たちであり、彼らを小池知事につなげたのは、元みんなの党代表の渡辺喜美 議員だと言われている。

都知事選の際から言っていたように、その意味では、小池新党ということになれば、最もその可能性が高い1人には渡辺議員も上げられるのではないかと思っている。

希望の塾の講師選定がきっかけで、前代表の野田氏と合わないと言われていたりもしたが、小池氏とは小泉政権を共に支えた閣僚仲間。

代表就任によって、一気に可能性が広がる事も考えられる。
ただ、昨年8月に書いた『「小池新党」ができれば雪崩を打ち日本の政局を大きく変える可能性がある』でも触れたように、過去に成功した新党は、いずれも自民党を割って出てきた議員たちが作った政党である。

この事から言えば、都知事選の際に秘書を出して裏小池選対を作っていたと言われている、石破茂 議員、平将明 議員、また小池氏と非常に親しいと言われている野田聖子 議員など、自民党から割って出てくる議員も出てこないかと期待する。

さらに、もう1人忘れてはいけないのが橋下徹 前大阪市長であろう。
全くの偶然か、「小池知事代表就任の意向」「若狭氏自民に進退伺」と同日にメディアに出たのが「橋下氏、維新の政策顧問退任の意向」だった。

表向きはテレビ出演などとの関係から政治的中立性を保つためとの事だが、結果的に現状はこれでどこの政党にも属さないフリーの状況になった。

ましてや「2万%ない」と言って華麗に知事になった方だ。
その可能性は大きくある。
ただ一方で、小池知事と連携する可能性を匂わせて、自分の価値をさらに高めて、逆に「ポスト安倍」などで自民党に高く売る選択肢を作っているようにも見えたりもする。

いずれにせよ「世界で最も影響力のある100人」に日本人で唯一選ばれた小池都知事が新たな一歩を踏み込んだわけだ、国政政党としての「小池新党」、さらにその先の政界再編までつながることを期待したい。

高橋亮平(たかはし・りょうへい)

一般社団法人政治教育センター代表理事、NPO法人Rights代表理事、一般社団法人生徒会活動支援協会理事長、千葉市こども若者参画・生徒会活性化アドバイザーなども務める。1976年生まれ。明治大学理工学部卒。26歳で市川市議、34歳で全国最年少自治体部長職として松戸市政策担当官・審議監を務めたほか、全国若手市議会議員の会会長、東京財団研究員、中央大学特任准教授等を経て現職。学生時代訴え続けた18歳選挙権を実現。世代間格差問題の是正と持続可能な社会システムへの転換を求め「ワカモノ・マニフェスト」を発表、田原総一朗氏を会長に政策監視NPOであるNPO法人「万年野党」を創設、事務局長を担い「国会議員三ツ星評価」などを発行。AERA「日本を立て直す100人」、米国務省から次世代のリーダーとしてIVプログラムなどに選ばれる。テレビ朝日「朝まで生テレビ!」、BSフジ「プライムニュース」等、メディアにも出演。MXテレビ「TOKYO MX NEWS」で解説も務める。著書に『世代間格差ってなんだ』、『20歳からの社会科』、『18歳が政治を変える!』他。株式会社政策工房客員研究員、明治大学世代間政策研究所客員研究員も務める。

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