予想下回る米雇用統計受けても買われた米国株式市場、この強さの背景とは

6月2日に発表された5月の米雇用統計では非農業雇用者数は13.8万人となり、予想の18.5万人を大きく下回った。さらに雇用者数は過去2か月分も下方修正された。失業率は0.1%低下の4.3%と2001年5月以来の低い水準となったが、平均時給は前年同月比で2.5%増と予想をやや下回った。

これを受けて2日の米国市場では米長期金利は低下し、10年債利回りは一時2.14%に低下した。ドルも円やユーロに対して下落した。ところが米国株式市場も上昇し、ハイテク株など主体に買われダウは62ドル高、ナスダックも58ポイント高となり、S&P500種株価指数も含めて、3指数ともに連日の最高値更新となったのである。

6月1日には本来あまり材料視はされないはずのADP雇用レポートが材料視されて、ダウ平均は3月1日以来の過去最高値更新となった。実際にADP雇用レポートはさほど雇用統計とリンクしていておらず、非農業雇用者数は予想を下回った。それにも関わらず失業率の低下や、FRBの利上げペースは緩やかになりそうとの期待が2日の買い要因となったとされる。

ADP雇用レポートで非農業雇用者数が市場予想を大幅に上回ったことを好感して米株は買われたが、現実にはそんなに良くなかった米雇用統計の非農業雇用者数を受けても買われた米国株式市場が続伸となったのは、それだけ地合が良いというか、ある意味バブル相場の様相を呈しているといえるかもしれない。この場合のバブル相場はどのような材料が出ても、買い要因に変換して買い材料にしてしまうような地合を示す。2日の買いの主役がこれまで相場を引き上げていたハイテク株であり、アマゾン・ドット・コムやフェイスブックなどが上場来高値を付けていた。この地合に変化がない限りは米国株式市場の上昇基調は継続されるとみられる。

5日の米国株式市場では、今週の英国の総選挙やECB理事会、コミー前FBI長官の議会証言なども控え様子見気分強まるなか、利益確定売りに押されたが、ダウ平均の下げは22ドル安程度に収まっていた。グーグルの持ち株会社アルファベットが節目の1000ドルを突破するなどこの日もハイテク株は買われていた。

5月の雇用統計を受けて、FRBの金融政策の行方についても緩やかな利上げが意識されたようだが、それはどの程度の緩やかさなのであろうか。市場では今回の雇用統計を受けても年内3回の利上げ予想に大きな変化はない。3月に続いて今月6月のFOMCでも利上げは確実視されている。ただし、その次は9月か12月かの判断は分かれているようである。また、保有資産の償還の乗り換え分の縮小についても年内開始するであろうとされている。

さらにその後の利上げのペースまで市場は意識しているのであろうか。イエレン議長は今年1月18日の講演で、米雇用の回復とインフレ基調の継続を受け、「2019年末まで、政策金利であるフェデラルファンド(FF)金利を年2、3回のペースで引き上げる」との見通しをFRB内でおおむね共有していると述べた。政策金利が長期の中立金利見通しである3%に近づくとの見方も示した(日経新聞電子版の記事より)。

2018年と2019年も0.25%刻みでそれぞれ3回引き上げるとすれば2019年末までには3%に届く計算になるが、このペースがもう少し緩慢になるのではとの認識も市場で出ているということなのであろうか。


編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2017年6月6日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。