瞑想がここ数年ブームになっている。いまのようなストレス社会において、瞑想に注目が集まることは「自明の理」なのかも知れない。「マインドフルネス」も瞑想の一つで、ビジネスチックであることに特徴がある。約10年前、Google、マイクロソフト、SAPなどのIT企業が導入して話題になった。
今回は、『マンガでわかるグーグルのマインドフルネス革命』(サンガ)の著者であり、「アキバ系コンサルタント」「秋葉原の執事」として活動している、方喰(かたばみ)正彰氏(以下、方喰氏)にマインドフルネスの事例について聞いた。
マインドフルネスとはなにか
――マインドフルネスは、Googleが人材育成プログラムに活用したことが起因となり、大きな脚光を浴びることになった。日本における導入は発展途上ではあるが、医療従事者に対するケアとして導入されるケースが増えている。
「日本では社会の医療化が進み、約8割の人が病院で死を迎える時代となっています。超高齢化社会とも相まって、臨床の現場で働く医師や看護師たちは、一晩に複数の患者を看取ることもあるといいます。死にゆく人々と共にあることは、プレッシャーとストレスを伴い、医療関係者のバーンアウト(燃え尽き症候群)の原因ともなっています。」(方喰氏)
「看取り、看取られることは、誰にとっても避けられないことです。医療従事者をマインドフルネスでケアし、バーンアウトしない環境をつくっていくことは、看取られる側にとっても良き死を迎えるために重要なことでしょう。」(同)
――しかし、解決すべき問題もある。マインドフルネスのエビデンスが少ない点である。安全性なども含めた研究も必要である。
「今後、研究を深めていく必要があるでしょう。人によって適切な運動量が異なるように、マインドフルネスも、人によって適切な取り組み量、取り組み方があるはずです。そのあたりの研究はまだ発展途上ではありますが、2013年に設立された『日本マインドフルネス学会』は、さまざまな実証研究が集約される場として注目されています。」(方喰氏)
「この学会は、ブームになる前からマインドフルネスに注目し、研究していた研究者たちが中心となってできた組織です。マインドフルネスがどのようなもので、科学的にどのようにその有効性が実証されているか、それが学会の中では特に重視されています。」(同)
――人材育成の先進国は米国である。そのため、米国のプログラムをそのまま和訳して、日本に輸入したようなものが少なくない。プログラムの内容は日本向けにカスタマイズをして成熟させる必要性があるだろう。
マインドフルネスのリスク
――次ぎはマインドフルネスのリスクについても言及しておきたい。瞑想は自分の内面に意識を向ける。Googleをはじめ、多くのグローバル企業で導入されて日本でも関心が高まっている。「ストレスを軽減する」「集中力を高める」などのメリットはあるが、悪い報告に進む場合があることも覚えておきたい。
瞑想の場合は「トリップ」という表現を使用することが多い。これは、「トランス状態」「ランニングハイ」などに似た現象である。トランス状態であれば、表層的意識が消失して心の内部の自律的な思考や感情が現れる。恍惚状態に近いので熱狂した雰囲気になる。ランニングハイも同様の傾向があらわれる。
マインドフルネスを、うまく実行できれば、仕事のパフォーマンスは向上するだろう。しかし、マインドフルネスの研修に参加して、自己嫌悪に陥ってパフォーマンスが下がった。性格が変わってしまったという人もいる。導入にあたっては、事前にメリットとデメリットを十分に理解することをお勧めしたい。
参考書籍
『マンガでわかるグーグルのマインドフルネス革命』(サンガ)
尾藤克之
コラムニスト
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