1年以上も前になるが、英国で、地方税を納付しなかった地方議員の氏名の開示をめぐり裁判が行われた。議会側は個人情報の保護を理由に非開示としたが、Bolton Newsの記者Haslamは、地方税を納付しない議員には予算案への投票権がないため開示するべきと主張した。
裁判所は記者の主張を支持して、データ保護原則(個人情報保護法)に関わらず氏名を開示するべきと判決した。地方議員が期待に応える仕事をしているかは有権者の関心事であり、予算案の審議に参加できないという情報の開示は個人情報保護に勝る、というのが裁判所の判断である。
秘匿された個人情報の開示を裁判に求める英国メディアの姿勢は印象的である。日本ではどうだろうか。
改正個人情報保護法が施行されたのに伴い日本新聞協会が声明を発表した。報道目的で個人情報が取り扱われる限り保護の対象とはならないので、行政機関や警察当局には社会に伝えるべき情報の開示を強く求める。また、この除外制度について国民に理解を求めていくというのが主な内容である。
要するに報道機関には特権があり、行政機関等はこの特権を尊重すべきであるということだ。確かに、個人情報保護法には「放送機関、新聞社、通信社その他の報道機関(報道を業として行う個人を含む。)」が「報道の用に供する目的」は適用除外との規定がある。日本新聞協会の声明はこの点を強調したものだ。
日本新聞協会では声明を不思議な形で公表している。声明本文にたどり着くには、声明を要約した記事「【改正個人情報保護法で声明】匿名社会の深刻化招く 報道の適用除外を周知 新聞協会」のページを開く必要があるのだ。
自らの声明にこのような記事を付ける理由がわからない。省庁や企業の報道発表を取材もせずに要約して記事化するのは新聞の常態だが、その悪い見本を日本新聞協会は示したようだ。
要約報道しかないのであれば特権を与える必要はない。日本のメディアにも、いざとなったら裁判にまで訴える英国メディアのような気概を求めたい。