敏腕弁護士のディアーヌは、夫と離婚して3年。だが夫はいまだに仕事上のパートナーで何かと衝突が絶えない。ある日、彼女は置き忘れた携帯を拾ったという男性アレクサンドルから連絡を受ける。優しい声と知的でユーモラスな会話に、ディアーヌは新たな恋の予感を感じてしまう。だが携帯を受け取りに行くと、アレクサンドルはハンサムだが身長136cmの男性だった。自分よりかなり背が低い彼にがっかりしたディアーヌは早々に帰ろうとするが、ひょんなことから二人をデートを重ねるようになる…。
美人で仕事もできるバツイチ女性と知的でハンサムでリッチだが身長が極端に低い男性との恋の行方を描くラブ・ロマンス「おとなの恋の測り方」。外見を気にする、周囲の目を気にする、慣習を気にする。年齢や外見にこだわらず、自由奔放な恋愛を楽しむイメージがあるフランス人だが、案外保守的な部分も捨てきれないのだろうか。バツイチのキャリアウーマンのディアーヌは、低身長ということさえ除けば、ほぼ完ぺきなアレクサンドルとの恋愛に踏み切れない。彼の方は、低身長のハンデをものともせず、恋愛や人生を積極的に楽しんでいる。
もちろん彼だって心の奥底では自分の外見に悩んではいるのだが、だからといって卑屈になったり、消極的になることはない。自分との恋に踏み切れないディアーヌに、アレクサンドルが何度も「僕たち、このまま続ける?」と尋ねるのは、むしろディアーヌが自分に過剰に気をつかうのがつらいからなのだ。周囲の好奇の目に打ち勝ち、自分自身の殻を破って二人は幸せになれるだろうか?というのが主なストーリーの流れ。もちろんハートウォーミングなロマコメなので着地点は見えている。だがこのお話、何だか納得できないことが多すぎる。そもそもお互いにバツイチの大人なのに、周りを気にしすぎる。ディアーヌの秘書は敵なのやら味方なのやら立ち位置がはっきりしない。
最大の謎は、ディアーヌの母親だ。娘の一番の理解者であるべき境遇なのに、差別用語を連打する始末である。さらに言えば、女性には、外見など気にするなと言わんばかりの展開なのに、男性のアレクサンドルが選ぶのは外見がとびきり美しい女性ディアーヌ。何となく矛盾を感じるのは私だけ…??!!ちょっと安易な展開に苦笑するものの、身長180cmを超えるジャン・デュジャルダンが低身長の男性の役を軽やかに演じているのは興味深い。かつて「赤い風車」で画家ロートレックを演じたホセ・ファーラー(フェラーとの表記も)は、膝に靴を履いて演じたそうだが、21世紀の今は幸いCGがある。便利な時代になった。
(ロマコメ度:★★★☆☆)
この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2017年6月18日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。