イングランド銀行の利上げ派が増加、総裁は時期尚早と火消しに

15日に開催されたイングランド銀行の金融政策委員会(MPC)では、政策金利を0.25%に据え置くことを決定した。今回もフォーブス委員だけが利上げを主張するとみられていたのが、そこにマカファーティー、ソーンダーズ両委員が利上げ派に加わり、5対3の僅差での現状維持決定となっていた。MPCの委員3人が利上げを支持したのは2011年以来となる。これを受けて市場では今後のイングランド銀行の利上げの可能性を意識し始めていた。

これを意識してか、イングランド銀行のカーニー総裁は20日、ロンドン市内で講演し「今はまだ金融政策の調整を開始するときではない」とし、利上げは時期尚早との認識を示し、火消しに走った。ところが、15日のMPCで据え置きに賛成していたハルデーン理事が21日の講演で、自身が近く利上げ支持に転じる公算が大きいと表明した。また、利上げ開始が後手に回るリスクが増えているとの認識を示した。さらにMPCメンバーでイングランド銀行のチーフエコノミスト、アンディ・ホールデン氏からも政策引き締めを遅らせ過ぎることのリスクが高まっているとの認識を示すとともに、6月の利上げを支持することも検討したと明らかにした。

イングランド銀行のMPCは9名のメンバーより構成される。総裁1名、副総裁2名、理事2名と、財務大臣により任命された外部委員4名の合計9名となる。しかし、3月14日に利益相反の可能性を申告しなかったとして批判されていたホッグ副総裁(銀行・市場担当)が辞任したことで一人空席となっていた。

9名のメンバーがフルで揃っていても議長以外の政策委員の意見が仮に真二つに割れた場合などは、まさに4対4となる。MPCでは採決にあたって頻繁に反対票が見られ、そして過去には9名のうち4名までもが反対に回ることもあり、総裁自身が少数派となってしまったこともあった。つまりカーニー総裁が利上げに反対しても、多数決で覆される可能性がある。

ただし、利上げを主張し続けていたフォーブス委員は、今月末に退任し、米マサチューセッツ工科大学(MIT)に戻る予定となっている。ハモンド財務相は19日にフォーブス委員の後任としてロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)のエコノミストであるシルバナ・テンレイロ氏をイングランド銀行金融政策委員会(MPC)の外部委員に指名した。

マカファーティー、ソーンダーズ両委員が利上げ派に加わったのは物価を意識して、フォーブス委員の意志を引き継ぐという意味合いがあったのかもしれないが、どうやら流れは利上げに傾いているようにも感じられる。今後はテンレイロ氏の動向次第でバランスがさらに変化してくる可能性もありうる。また、ホッグ副総裁の後任もいずれ指名されるとみられ、こちらの人事にも注意しておく必要がある。


編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2017年6月22日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。