都民ファーストの会のウェブはポピュリズム全開です

東京都議選が近づく中、小池百合子都知事が代表に就任した都民ファーストの会の一部の立候補予定者は「小泉チルドレン」「小沢チルドレン」「安倍チルドレン」の再来である「小池チルドレン」であるかのように揶揄されていますが、東京都民は、そのような先入観ではなく、あくまでも都民ファーストの会の政策の有用度、完成度、および信頼度に注目する必要があると考えます。この記事では都民ファーストの会の[website 2017/06/10現在]を基に、その政策を勝手に点検させていただきます。

スローガン

都民ファーストの会のwebsiteを見ると、一面に緑色がひろがります。これがいわゆる「小池カラー」なのでしょうか、心地よいイメージを感じる一方で、その心地よいイメージで有権者を扇動する【子供騙し Argumentum ad captandum】のようにも思えてきます(笑)。ページのトップには、メインの【スローガン slogan】である「ふるい都議会を、あたらしく!」が位置し、その下にいくつかのサブのスローガンが並んでいます。以下、それぞれについて詳しく見ていきます。

ふるい都議会を、あたらしく!

「古いものを新しく」というのは使い古されたスローガンですが、これは明らかな【論理的誤謬 logical fallacy】を含んでいます。人間には、事物の選択にあたって、古いものよりも新しいものを選好する傾向があります。このような人間のバイアスを利用して新しいものを無批判に選択させる方向に導く言説を【新しさに訴える論証 appeal to novelty / chronological snobbery】と言います。「古いもの=偽」「新しいもの=真」という命題は論理的には成立しません。都民ファーストの会のスローガンは、メインのスローガンからしてイメージによる目くらましであると言えます(笑)。

東京は、はやい。都政は、おそい。都議会は、もっとおそい

内容に変化がない限り、政策の実行速度が「速い」ことは「遅い」ことよりも利益をもたらします。このスローガンは都政のスピードの状況をわかりやすく説明しているものと考えられますが、「都民ファーストの会」の政策の実行速度が「速い」か「遅い」かという肝心な点が欠如しています。あくまで客観的に言わせていただければ、都民ファーストの会の代表である小池百合子氏の都政は「決められない政治」と呼ばれているようにかなり遅いです(笑)。法律上は何も問題がない安全・安心な豊洲市場の移転を延期し、東京都は不必要な経費を支払っています。このスローガン、まるでブラック・ジョークのように聞こえます(笑)。

ドンはやめても、小さなドンがでる。どんどん

このスローガンは、韻を踏む表現を用いることで知性とウィットを感じさせる【韻効果 rhyme as reason effect】を狙ったものであるかと思いますが、残念ながらかなりハズしていると思います(笑)。「ドン」の定義がわからないので何とも言えませんが、基本的には、批判を集中させる【スケイプゴート scapegoat】を設定して大衆の不満を転嫁させることで味方につける典型的な【ポピュリズム populism】であると言えます。「ドン」と呼ばれていた内田茂都議が引退してしまったので、苦し紛れに「小さなドン」なる【ネガティヴ言葉 negative image word】を新たに創っているものと考えられますが(笑)、もし「小さなドン」が実際に存在するのであれば、具体名を挙げて確固たる証拠を突き付けて批判する必要があるということです。そうでなければ、政敵を根拠なく【悪魔化 demonization】しているに過ぎません。

9日間は腰が低いが、4年間ふんぞりかえる。そんな議員を選んでいない?

これは、先入観を基にして事物をネガティブな画一的タイプに区分することで蔑視する【ステレオタイプ化 stereotyping】という幼稚で危険な【人格攻撃/人身攻撃 ad hominem / argumentum ad hominem】であり、古くは土井たか子氏が、現在では蓮舫氏や山尾志桜里氏が定常的に使っている【悪魔化】手法です。かなり程度が低い思考停止のスローガンではありますが、一部の情報弱者はコロッと騙されてしまいます(笑)。

過去25年間で成立した、議員提案の条例は、たった1本。都議会って、何してるの?

「議員提案の条例」を無批判に肯定していますが、それで都議会が何もしていないかのような印象を植え付けるのは不合理です。地方自治体における二元代表制において、議会の最も大きな役割は知事が執行する行政をチェックすることです。代表である都知事に対して白紙委任を与える都民ファーストの会の議員の方がむしろ何もしない可能性が大きいと言えます(笑)。

「実績は当選5回!」いやいや、議員の実績は、何をしたかでしょ。

同じような【悪魔化】がとめどなく続いているので、かなり面倒くさいのですが(笑)、このような選挙演説を他の候補が行っているのであれば、具体名を挙げて具体的に実績が低いことを示して批判すればよいことです。あえて言わせていただければ、相手の批判については積極的であるにも拘わらず、自己点検の形跡がほとんどないことの方が奇異です。自分の事はさておいて相手を批判ばかりしていたら民進党のように評価されてしまいますよ(笑)。

議員になったら、勉強しない。4年間落第ないから、パーティとヤジだけうまくなる。

ここまで言うと、いわゆる「経験者は語る」の領域に達していると思います(笑)。

以上、都民ファーストの会のwebsiteにおける【情報操作 information manipulation】【心理操作 psychological manipulation】【倫理操作 ethical manipulation】で構成されるスローガンのクドさは、既に民進党のwebsiteを超えており、むしろ過去に存在した鳥越俊太郎東京都知事候補SEALDsのwebsiteに近い感じすらします(笑)。

基本政策

websiteによれば、都民ファーストの会の[基本政策]は次の通りです。

 (01)忖度だらけのふるい都議会を新しく
(02)「のり弁」をやめます
(03)利権を一掃します
(04)待機児童対策を加速します
(05)教育の機会を増やし、質を高めます
(06)命を守る、頼れる東京
(07)健康長寿を誇る首都東京へ
(08)ライフ・ワーク・バランスの徹底
(09)成長し続ける都市・東京へ
(10)オリンピック・パラリンピックを成功へ導く
(11)都民ファーストの視点で行政改革を徹底します
(12)「多摩格差」を解消し、島しょ地域の魅力を世界へ発信します
(13)都民の食の安全と安心を守ります
(14)スモークフリー社会へ

これらの政策については、有権者がじっくり細かい点までチェックすればよいことなのですが、残念なことに、以前宇佐美典也さんが徹底的に指摘した[党の綱領]と同じように、基本政策の説明文書には構文が論理的でない箇所がいくつも認められ、都民ファーストの会が何をするのかサッパリわからない箇所まで存在します。特に基本政策のタイトルと内容が全然一致していないのは深刻です(笑)。ここでは、代表例として上記の(01)と(13)について詳しく見ていきます。

基本政策1 忖度だらけのふるい都議会を新しく

自分ファーストの議員から、都民ファーストの議員へ
都議会維持費4年間で約220億円の衝撃!

【これまでの議会】費用弁償、使い放題の公用車、ずさんな政務活動費の支出、自らが代表を務める政党支部を通じた寄付控除

【知事実績】・知事報酬半減 ・海外視察費の見直し
【議会実績】・議員報酬20%削減 ・費用弁償廃止 ・政務活動費削減(月60万円→50万円)

【施策】・議会改革条例をつくります ・議員特権を廃止します ・議会棟での禁煙を実施します

驚くべきことに、タイトルは「忖度だらけのふるい都議会を新しく」としているにも拘わらず、内容を見ると「忖度」についてまったく触れられていません(笑)。この政策の考案者は、誰が誰に忖度していることを想定したのでしょうか。ちなみに、客観的に考えれば、小池都知事が代表である都民ファーストの会こそが、二元代表制を無視して都知事に忖度する可能性が最も高い政党と言えます。

また、都民ファーストの会の言う「ふるい都議会」というのは、内容を見ると、どうやら「経費がかかる都議会」という意味だったようです。「ふるい」という言葉から「経費がかかる」という意味を連想することは、少なくとも私には無理です(笑)。

さらに施策として「議会改革条例をつくります」「議員特権を廃止します」まではわかるとして、唐突に「議会棟での禁煙を実施します」を並記するのは、論理がぶっ飛び過ぎではありませんか(笑)。

なお、どうでもいいことですが、「ふるい・新しい」は「古い・新しい」あるいは「ふるい・あたらしい」に修正された方が適当であると考えます。実はこの仮名と漢字の使い分けが気になって私は3日も眠りにつけていません(笑)。いくらなんでもチェック不足なのではないですか。

基本政策13 都民の食の安全と安心を守ります

5800億円を投じながら、過去に行政、議会が移転の条件として都民に約束していた環境基準は、いまだに達成されていません。
さらに、毎年約100億円もの赤字発生が懸念される市場の持続可能性などを「市場のあり方戦略本部」で総点検し、持続可能な市場の確立を総合的に判断する知事の立場を尊重します。

この文書もかなり難解です(笑)。内容を見ると、「5800億円を投じながら」といきなり書かれていますが、何に5800億円投じたのかまったく記載されていません。何の説明なしに「移転」というのも唐突です。いったい何が移転するのか不明です。全体としておそらく豊洲市場問題のことを指しているのかと思いますが、豊洲市場という具体名を挙げると何か不都合があるのでしょうか。また、ただでさえ、豊洲移転問題で誤解されている「環境基準」も何の説明もなく使われています。政局利用でしょうか。それと、毎年100億円赤字が発生する市場ってどこでしょうか。おそらく市場PTの恣意的な計算を認めているのではないかと推察します。そして、何よりも最大の疑問は、なぜ知事の立場を尊重すれば、タイトルのように都民の食の安全と安心が守れるのでしょうか。残念ながらサッパリわかりません(笑)

ポピュリズム政権は「死して屍拾うものなし」

どのように贔屓目に見ても、都民ファーストの会の政策は、[都議会自民党の政策]に比べて、具体性の点からも緻密性の点からもシンタックスの点からもかなり劣っているものと考えます。そしてその政策の弱点を隠すかのように自民党に対する徹底的な【悪魔化】が認められるのは本当に残念なところです。このようなあからさまな[ポピュリズムのメソドロジー]からは、細川政権、小泉政権、そして民主党政権による国民騙しを想起せずにはいられません。

あえて言わせていただきますが、東京12チャンネルの人気番組のナレーションの言葉を借りれば、ポピュリズム政権に明日という日はありません。死して屍拾うものなしです。都民ファーストの会の皆様におかれましては、今からでも遅くはないので、政策の論理的な再点検をお願いしたいところです。少なくとも、フィニッシングスクールで指導されてきたような微笑みが上手な候補者が総出演している[イメージ動画]を作っている場合ではないと思います(笑)。


編集部より:この記事は「マスメディア報道のメソドロジー」2017年6月10日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はマスメディア報道のメソドロジーをご覧ください。