金融引き締めの証?超高級コンドで、差し押さえの異常事態

米連邦準備制度理事会(FRB)のイエレン議長は6月27日、銀行の健全性を説いた上で「我々が生きている間に」金融危機は発生しないだろう発言したことはご案内の通り。この予想が独り歩きしていますが、イエレンFRB議長は「利上げ軌道は不変」と述べた上で、「資産価格は高く見える」と警鐘を鳴らしていました。

時を同じくしてフィッシャーFRB副議長は「高い資産価格は将来、金融不安定をもたらす恐れがある」、サンフランシスコ連銀総裁は「株市場の過熱は明白で経済へのリスクであり、調整が起こりうる」と冷や水を浴びせたものです。前日の6月26日には、NY連銀のダドリー総裁が低金利や米株高、信用スプレッドの縮小を指し利上げの必要性を唱えていました。バブルの芽を摘む姿勢を鮮明にしたと言えます。

6月27日と言えば、欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁の資産買入縮小を示唆した日でした。まるで米欧の当局が協調したかのようです。

ドラギ総裁、7月はどんな発言で市場を沸かせるのでしょうか。


(出所:European Central Bank/Flickr)

Fedにしてみれば、足元の米株高は自業自得の感は拭えません。5月の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録で米株の割高感を指摘した文言を削除していましたよね?ドラギECB総裁にしてみれば独連銀をはじめとした緩和縮小の突き上げもあり、Fedに歩み寄る利点はあったことでしょう。

当局者が長期金利の低下という謎に立ち向かうなか、ニューヨークの超高級コンドミニアムでは異常事態が発生しています。

金融危機の発生から10年を経て、何を隠そう”差し押さえ(foreclosure)”の言葉がヘッドラインを飾りました。サブプライム層の話ではありませんよ。南側からセントラル・パークの眺望を独り占めできるOne 57、57丁目の7アベニュー近くにそびえる高級コンドミニアムが舞台です。しかも、最上階、ペントハウスだといいますから穏やかではありません。

持ち主のナイジェリア人でアトランティック・エナジーの幹部、Kolawole “Kola” Aluko氏は5,090万ドル(約57.7億円)で175.4坪の住居を購入したものの、そのうち3,530万ドルはルクセンブルグの銀行から住宅ローンを借り入れていました。ところが2016年秋までの返済を踏み倒しただけでなく、コンドのメンテナンス料から固定資産税すら払わなくなってしまったのです。ルクセンブルグの銀行は不動産を差し押さえ7月に競売にかけるだけでなく、Aluko氏が担保として差し出したヨットも回収する方針です。

しかし、肝心のヨットは「圏外(out of range)」の状態だといいます。Aluko氏が恐らく、ヨットに身を隠しているのでしょう。ちなみにそのヨットは音楽界のパワーカップル、ビヨンセとJay-Zにかつて週当たり90万ドルでレンタルしていた逸品だそうな。担保物件としては、申し分ないこと間違いありません。

One 57と言えば、物言う投資家で有名なパーシング・スクエアのビル・アックマン氏が取得し1億ドルでの転売に成功するなど、ビリオネアが保有する超高級物件。それなのに、この体たらくです。しかもOne 57での差し押さえは今回が初めてではなく、過去に中東のビジネスウーマンが既に引き起こしていたとか。NYの超高級コンドミニアムのバブルはじけたとなれば、他のマーケットへ波及するのも時間の問題かもしれません。

(カバー写真:cogito ergo imago/Flickr)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2017年7月3日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。