7月2日の東京都議会選挙の結果は、小池知事の支持勢力が79議席を獲得し圧勝となった。自民党は選挙前の57議席から23議席となり、歴史的な敗北を期した。都知事選の勢いにのって新党を立ち上げ、新人候補を中心に大量の当選者を獲得するというパターンは、今年のフランスの大統領選挙でのマクロン氏の勝利とその後の国民議会(下院)選挙でマクロン大統領の新党「共和国前進」グループが大勝した流れにも通じる。
都議会議員選挙の結果がそのまま国政選挙にも影響するのか。今回の都議選を見る限り、受け皿さえあれば安倍一強と言われた安倍政権を揺るがす可能性があることを示した。現在の自民党政権の強さは、野党の敵失の面も大きく、野党よりもまだましな政権なのでとの認識も強いための支持ではなかろうか。しかし、ここにきてその支持率も低下基調となっており、都議選の結果がその傾向を顕著に示すことになった。
今後は安倍政権の求心力の低下により、じわりじわりと影響が出てくることが予想される。安倍政権の支持率低下が自民党の支持率低下に影響を及ぼすことになれば、自民党内で対策を講じる必要性が意識されるかもしれない。フランスで若手の大統領が出たように、日本でも若い首相の誕生を期待する声も上がるかもしれない。あくまでいまのところは憶測に過ぎないが。
今後の安倍政権の求心力の低下が金融市場にどのような影響を及ぼすのか。安倍首相は都議選の結果を受けて、初心に帰ると発言していた。まさか2012年11月の輪転機発言に戻るわけではないと思うが、新アベノミクスを掲げるのではないかとの期待もあるようである。
すでに日銀は使えそうなあらゆる手段を講じてしまった。ここで政権による意向でさらに強力な金融緩和策を依頼されても、それに答えることは難しい。マイナス金利の深掘りもできなくはないが、旗艦の長い国債利回りが再びマイナス化してしまうと、以前に増しての金融機関からの反発が予想される。国債をさらに大量に買い入れることも数字上はありうるとしても現実的ではない。それ以前に、あれだけの緩和をしておきながら、物価目標達成がいっこうに見えない原因についてしっかり説明しなければ、追加緩和の必要性を納得させられまい。
それでは金融政策がだめなら財政政策か。国債残高が1000兆円に膨れあがったのは何が要因だったのか。これは特に自民党政権下での度重なる経済政策による影響が大きかったはずであり、社会保障費の抜本改革を進めなかったことによるものではなかったのか。
ここでさらなる財政政策を講じるのであれば、かなり効果的なものを打ち出さなければ、日本の財政悪化による悪影響の方がクローズアップされる懸念がある。いずれにしても新アベノミクスというよりも、当初のアベノミクスが何であり、その効果が具体的にあったのかを立証する必要も出てこよう。
安倍政権の求心力が落ちるとなれば、日銀にとっては突貫工事で作り上げたバベルの塔のような金融政策、「長短金利操作付き量的・質的緩和」を調整するチャンスなのかもしれない。欧米の中央銀行も出口に向けて歩き始めており、日銀も早めにリフレ的な発想を排除し、より現実的な政策に戻し、市場と向き合う必要があるのではなかろうか。
編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2017年7月5日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。