6回目の米国独立記念日

米国各地が毎年盛大に祝賀ムードになる独立記念日(Don Sullivan / flickr:編集部)

先ほどまで、ドンドンと花火を打ち上げる音が響いていた。シカゴに移り住んでから6回目、現在のアパートに引っ越してから5回目の独立記念日である。我が家からは180度、外を見渡せるが、地平線に沿って少なく見積もっても200-300か所で花火が打ち上げられていた。

3年前は眼前にある科学博物館の後ろで打ちあがっていたが、近くで大規模な花火が見られなくなったのが残念だ。しかし、数も規模も数年前よりは確実に増えており、米国の景気の回復を実感させられる。レストランの料金も20-30%上昇しているが、円換算にすると倍ぐらいに高くなったような感じがして、これは痛い。

花火を景気よく打ち上げるのはいいが、北朝鮮がとうとうICBMの発射に成功したようだ。もちろん、日本はテポドンで、すでに射程内に入っていたので、ICBMが作られてもそれほど差はない。本来すでに危機管理が必要なのだ。しかし、米国にとっては、今までのように鼻であしらうことができなくなったことを意味しており、この成功は米国の対北朝鮮政策に大きな変化をきたす可能性がある。

米国が北朝鮮を攻撃すれば、韓国や日本に甚大な被害が生ずる危険が大なので、専門家は否定的だが、トランプ政権だけに何が起こるのか予測不能なのが恐ろしい。もしもの時に、かつての菅政権や鳩山政権のような内閣であれば日本はどうなるのかと考えると、背筋が寒くなる。「Trust me」と言っている間に、日本が火の海になるかもしれない。

森友問題や加計問題も重要だが、対北朝鮮対策や医療制度の問題などと比べれば小さな問題だ。昨日、エチオピア人研究生と話をしていたが、米国で生活する最大の不安は、病気になった時にどうするかという問題だ。日本では患者負担率が増えたといっても、公平なアクセスが担保されており、また、高額医療制度があるため、最大の負担額は月約10万円である。米国では、正に、お金で命を買う状況であり、個人破産の最大の原因が医療費の負担であることは以前に紹介した。

日本では医療保険制度が、空気のように存在していると安心しているような気がする。しかし、これまで維持してきた医療保険制度は、もはや限界に来ている。それにもかかわらず、国会でまともに議論されているのかどうかさえ伝わってこない状況だ。見かけのパーフォーマンスやスキャンダルを政局につなげてはブーメランのように跳ね返ってくる漫画のような政治ではなく、憲法、医療、外交など、国の抱えている重大案件を真剣に議論して欲しいものだ。

米国の調査では、トランプ大統領よりCNNを信頼している人の割合が多いとのことだが、私は朝日新聞より、安倍政権を信じたい。


編集部より:この記事は、シカゴ大学医学部内科教授・外科教授、中村祐輔氏のブログ「中村祐輔のシカゴ便り」2017年7月5日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。