「防衛大臣の職責」を自覚しない稲田氏 即刻解任を

防衛省サイトより(編集部)

稲田朋美防衛大臣が、九州北部での記録的な豪雨で自衛隊が災害対応に当たっていた7月6日、昼の1時間余り防衛省を不在にして、民間人との防衛政策の勉強会に出席し、その間、40分間は、副大臣、政務官の「政務三役」が不在であったことが批判にさらされている。

石破元防衛大臣は、

防衛の仕事は、5分、10分の遅れが思わぬ結果を引き起こすことがあり、近くにいたから問題ないということではない。防衛省としてあるまじきことであり、原因を解明し、そういうことが二度とないようにすべきだ。

と述べたとのことだが、全くその通りだと思う。

防衛大臣は、他国の侵略的な行為への対応や防衛出動に関して重要な職責を担うものだが、ある意味ではそれ以上に重要なのは、重大な災害で国民の生命が危険にさらされているときに、防衛省のトップとして、自衛隊組織の人的・物的資源をどこにどのように配置するのかを、刻々と変化する状況の中で適切に判断することであろう。しかも、災害への対応は、防衛省だけで行うものではない。全国の消防組織を統括する総務省消防庁、被災地の自治体などとの連携、それらを統括する首相官邸と、常時、緊密な連絡をとり、必要な調整を行うことが、防衛大臣に求められる極めて重要な職務である。

稲田氏が防衛省を不在にした昨日正午頃は、九州北部を襲った豪雨で、数十万人に避難指示が出て、しかも、各地に孤立した地域があり、一刻も早い救助を待ち望んでいる人たちが大勢いた。そのような状況で、民間人との「勉強会」に出席していたというのは、重大かつ深刻な豪雨災害の被災者やその安否を気遣う家族の心情を思うと、絶対に許せないものである。

稲田氏が出席した「勉強会」というのも、支援者ら中心のイベントであろう。被災者の救援より、そういう「勉強会」を優先する稲田氏の姿勢は、一般の国民より支援者・お友達との関係を優先する森友学園・加計学園問題等での安倍首相の姿勢と共通するものである。

都議選の応援演説で、

防衛省、自衛隊、防衛大臣、自民党としてお願いしたい。

などと防衛大臣にあるまじき発言をし、直後に発言を撤回した際には、

緊張感を持って職務に臨む。

などと述べていたが、その言葉は一体何だったのか。

稲田氏は、

複数の政務三役が近くに所在し、速やかに戻ることができる態勢をとっており、対応に問題があったとは考えていない。

と述べているとのことであり、菅義偉官房長官も、会見で、

問題はないと思っている。大臣も含めてすぐ近くに所在し、秘書官から随時連絡を受けて速やかに省内に戻る態勢だった。

と述べたとのことだが、平時において「不測の事態」の発生に備えるというのとは全く異なり、既に重大な災害で多くの人の命が危険にさらされているのである。何かあったら連絡を受けて防衛省に戻れば良いという話ではない。国土の防衛のために配備されている陸海空の自衛隊を、防衛面での影響を最小限にしつつ、最大限効果的に九州での豪雨災害の救援対応をするために、防衛大臣として、他の機関との連携をとりつつ全力で対応に当たらなければならないのは当然である。

「連絡を受けて防衛省に戻ればよい」などというのは、稲田氏も、菅氏も、今回の豪雨災害を不当に軽視しているとしか思えない。「国民の命を守る」という防衛大臣の最大の職責を全く自覚しているとは思えない稲田大臣は即刻解任すべきである。これ以上、このような人物を防衛大臣の職にとどまらせることは、国民として到底納得できることではない。


編集部より:このブログは「郷原信郎が斬る」2017年7月7日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は、こちらをご覧ください。