池内先生も紹介されていたが、The Economistが「アラムコIPO、新皇太子の介入が最大の懸念」(日経が記事翻訳を7月7日に掲載)と題して報じている件、投資家にとってはどこまで情報開示がなされるかが当面の関心事だろう。前回の弊ブログ「サウジアラムコはIPOに先立ち情報開示の改善が必要」で、FTが記事の中で、2018年後半のIPOに先立ち「サウジは、2015年と2016年の財務諸表と、2017年の暫定決算数値を投資家に開示する」と伝えていることを紹介した。
今朝、サウジアラムコが「2016年の年次報告(2016 Annual Review)」を発表した、というニュースがあったので、さっそく同社のHPをチェック、ハイライトと、フルレポートの「上流部門」および最後の「数値」という項目を読んでみたが、これだけでは投資家は到底満足はしないだろうな、と思われるものだった。埋蔵量の数値はあるが、正確かどうかを判断する詳細資料は、当然のことながら、ない。これはあくまでも操業(Operation)に関する実態報告で、利潤、売上高、操業費、支払い税金、エネルギー事業以外への支出などもまったく分からない。会社の価値評価にはやはり、欧米の基準にしたがった財務諸表が必要だろうな。
さて、ハイライト等の興味深い点を紹介しておこう。
<2016年のハイライト>
・生産量 10.5百万バレル/日(BD)
・生ガス処理量 120億立方フィート/日(LNG換算92百万トン/年)
・販売用ガス生産量 83億立方フィート/日(LNG換算64百万トン/年)
・世界全体の精製能力 5.4百万BD(但し、アラムコのシェアーは3.1百万BD)
・上流 油田2箇所、ガス田1箇所を新発見、Shaybahにて25万BD生産増
<フルレポート:上流部門>
・原油+コンデンセート埋蔵量 2,608億バレル(BP統計集2017では、2,665億バレル)
・天然ガス埋蔵量 298.7兆立方フィート(BP統計集2017では、297.6兆立方フィート)
・非在来型ガス・プログラムを推進中。2017年末までに、Wa’ad Al Shamal産業都市の産業用と電源燃料用として55百万立方フィート/日(LNG換算42万トン/年)の生産開始を目指している。(これは、シェールガスを開発している、ということだ!)
・探鉱、生産および処理分野での投資は、供給の柔軟性、世界をリードする生産能力維持、将来の石油供給の安定化という我々の役割(role)を満たすために行っている。
・余剰生産能力(Spare Capacity)は維持した。
<数値>(既述のものは省略)
・炭化水素生産量 13.5石油換算百万BD
・NGLの生産量1.4百万BD
・原油+コンデンセート生産量
2015 3,708百万バレル(10.2百万BD)
2016 3,828百万バレル(10.5百万BD)
・原油輸出量 2015 2,603百万バレル(7.1百万BD)
2016 2,799百万バレル(7.7百万BD)
編集部より:この記事は「岩瀬昇のエネルギーブログ」2017年7月7日のブログより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はこちらをご覧ください。