日本経済新聞の「買って住みたい街ランキングに異変」という記事を読みました(図表も同紙から)。不動産会社が発表している街のランキングが大きく変わったというのです。郊外の利便性の高い街が上位に入ってきたという「変化」を強調していますが、本当でしょうか?
2017年版のランキングはこうなっています。
1位 船橋
2位 目黒
3位 浦和
4位 戸塚
5位 柏
6位 流山おおたかの森
7位 津田沼
8位 町田
9位 三鷹
10位 大宮
この最新ランキングの調査方法は、2016年の一年間にHOME`Sという不動産サイトに掲載された首都圏物件の中で、問合せの多かった駅名を集計してランキングしているそうです。「住みたい街」ではなく、「問い合わせの多かった駅」というのが正しい表現です。
例えば、大規模なマンション販売があったりすれば、その最寄駅の問い合わせ件数は増えることになりますから、「問い合わせが多い=買って住みたい」というのはかなり強引です。ランキングを見ると聞いたことのない駅名も上位に入っています。
また、2016年まではランキングの上位常連だった吉祥寺が姿を消し、「その内容にネット上で驚きの声が広がった。」と騒いでいますが、記事の中にも書かれているように調査方法が変わっています。
2016年のランキングはHOME`Sのサイトを調べると、2015年11月16日~17日に、3年以内に住まいの購入を検討している居住者にインターネット調査した結果です。インターネット調査で「どこの街の不動産を買いたいですか」と回答してもらうのと、サイトの問い合わせ件数を機械的に集計したものを比較して「異変」と決めつける記事の内容はかなりバイアスがかかっていると思います。
都心の不動産価格が上昇し、買えなくなってきた人たちが郊外の物件にシフトしている傾向は確かにあるのかもしれません。しかしそれは、住みたい街が郊外になったのではなく、住める街が郊外にしかなくなってしまったという消去法の選択です。
あたかも吉祥寺、横浜、恵比寿といった昨年までのランキング上位の街の人気が凋落し、郊外が人気と印象付けるような、記事の構成は読者を誤解させ、新聞への信頼性を損ねる残念な内容だと思いました。
記事を書いている日本経済新聞社の企業報道部大林広樹記者に、どのような意図があるのか、お話伺いたいものです。
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※内藤忍、及び株式会社資産デザイン研究所をはじめとする関連会社は、国内外の不動産、実物資産のご紹介、資産配分などの投資アドバイスは行いますが、金融商品の個別銘柄の勧誘・推奨などの投資助言行為は一切行っておりません。また投資の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。
編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2017年7月7日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。
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