ども宇佐美です。
さていきなりですが、以下のデータを見てください。
この表は文部科学省が、平成21年から23年にわたって開催した「獣医学教育の改善・充実に関する調査研究協力者会議」という会議において、委員に配布した資料から抜粋したものです。この資料によると、日本で獣医学部卒業生が13.7万人に1人程度なのに対して、英独仏では10.1万人に1人程度、アメリカでは13.4万人に1人程度、となっています。いずれにしろ日本はこれら諸国でもっとも獣医学部卒業生の比率が低いことになります。続いて以下の表を見てください。
これも同じ会議で配られた表ですが、これは獣医師のうち研究職が占める割合の国際比較で、日本は5.8%と米(9.7%)、欧(8.7%)に比べてかなり低い水準にとどまっています。さてこの二つのデータの解釈に関して、同会議では平成21年3月に以下のやりとりがなされています。
(○委員 ●文部科学省)
○ 大学院側、今入学割れしているところがいくつかあり、減少傾向がある。新たなイノベーションを担う人材を確保するということはやはり大学院程度のところで少しケアをしなければならない。あるいは、大学院がイノベーションを担う非常に重要なところだが、この辺についてはまた議論しなくてはいけない。
● ご指摘の通り大学院の入学者確保というところが大きな課題であるというのはお示ししたところではあるが、そのための取組を先生方に大いに議論していただきたいと思っている。方策例の一番上のところ、これは例えば、医師養成の場合に関しまして、臨床研究に従事する研究者が属しているという観点から、研究者と大学院に関して、研究医の養成確保に一貫してプログラムを組む場合は、入学定員の増員を認めるというような方策も加えている。獣医に関しても養成規模が足りないということであればその数のことも含めて先生方にご議論いただきたいと思い、叩き台として今回論点として挙げた。
○ 資料5-4にありました獣医師数の国際比較というのがあったが、いわゆる一般的な獣医師が活躍している現場も、それから研究職として活躍している現場も、欧米に比べてやはり獣医師は足りていないというデータがここにある。こういうものも踏まえての、文章の落とし込みっていうふうに理解していいか。
● それでいい。
○ そうすると、研究職の中でどれだけの獣医師が今要望されているのかというデータは、我が国の場合はまだない、あるいは、どこかにあるのか。
● 獣医数ということでは、我が国の研究者としたら何人必要かという部分のデータはないので国際比較の観点から見たときにということで参考データとして用意した。
○ 決して自分は入学者数が減少していると思わないが、毎年30名が入って30名卒業している。ただ、問題は卒業した後に受け皿がない。ポストがどんどん減らされている。そのため、もう少し企業も含めて、受け皿だけきちんとすれば、入学者数は当然増えてくる。
これを読んでいただければわかると思いますが、文部科学省(少なくとも高等教育局専門教育課)は平成21年(2009年)の段階で、会議の場で「欧米に比べて獣医師が足りない」と認めており、一方で研究者に関しては「大学院の入学者の確保」というところで逆の問題があると認識しています。そりゃそうですよね、データがそうなっているのですから。
その後これに対して前川元次官は
「獣医師の需給の見通しを内閣府が十分示さないままに規制改革を進めたとして、これが行政をゆがめたことに当たる」
と主張しているようなのですが、これでは文部科学省として「獣医師の数が足りない」と正式な会議の場で言っておきながら「獣医師の数が足りないという根拠を示してくれない」と内閣府に文句をつけているということになります。私としては「文部科学省の言っていることの意味がわからない」というのが率直な感想です。
そんなわけで、私からみればどう見ても行政を歪めているのは文部科学省の方としか思えないのですが、これは私がデータの見方や議事録の解釈の仕方を間違っているのでしょうか?
別に情報を歪めているつもりではないのですが、、、、
ではでは今回はこの辺で。
編集部より:このブログは「宇佐美典也のblog」2017年7月10日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は宇佐美典也のblogをご覧ください。