獣医学部の入学定員と出口規制

加計学園問題について国会の閉会中審査を聞いていたが、メディアが触れていない獣医学部の入学定員に関する質疑に違和感を覚えた。そこで数字にあたることにした。

質疑は産経新聞サイトだけが報じている。青山繁晴自由民主党参議院議員の「(獣医学部は)現在930人の定員だが、1200人まで水増し入学が行われている。これで需要が均衡しているともしも文科省が判断しているのであればこの点からもおかしいのではないか。」という質問に対して、前川喜平前文部科学次官が「獣医師の需要がどのくらいあるのか、それに対してどのくらいの獣医学部の入学定員が望ましいのか、これは政策的に考え、定員管理を政策的に行っていくということが当面正しい方法」と答えた部分である。

青山議員が質問の後段で触れているように、文部科学省は収容定員充足率を厳密に管理している。2015年には「平成28年度以降の定員管理に係る私立大学等経常費補助金の取扱について(通知)」を発出し、定員超過が激しい大学に対する私学助成の減額を厳格化した。通知では医歯学部の入学定員充足率上限は1.1倍に設定されている。一方で獣医学部の上限は他学部と同等である。どうして相違があるのだろうか。

2017年2月に結果が発表された医師国家試験の合格率は新卒者と既卒者の全体で88.7%だった。医学部の定員充足率を上限の1.1と仮定すると、1.1×0.887=0.976とほぼ入学定員に近い数で医師が誕生していることになる。

3月発表の獣医師国家試験では合格率は77.2%。ここで青山議員の数値を使うと(1200/930)×0.772=0.996となる。こちらも最終結果は入学定員にほぼ一致する。獣医学部での教育は医学部に比べて定員超過で実施されているが、出口となる獣医師国家試験でふるいにかけられて辻褄が合うようになっている。

青山議員の質問は国家試験のことを考慮していないが、前川前次官の回答も文部科学省だけではなく農林水産省との合作で出口規制が行われていることを説明していない。

専門知識に欠けた医師が生まれては困るから定員充足率は厳密に管理されている。一方で獣医師にも専門性が求められるはずなのに経済学部や文学部と同程度にしか管理されていない。これは大学での専門教育の質を重視する文部科学省の基本方針に反する。それでは充足率上限を医学部と同じにしたらどうなるか。国家試験の合格率が今と同じだとすると獣医学部は定員を160名ほど増やさなければならないのだが、前川氏はどのように答えるだろうか。