やはり「萩生田修正」に問題があるとは思えない --- 山田 高明

寄稿

閉会中審査で答弁する萩生田官房副長官(衆議院インターネット審議中継より:編集部)

前川氏が告発している内容の事実性と、高官時代の出会い系バー通い(とそこから提起されるモラルや職責上の問題)とは、切り離して、別個に論じる必要がある。

ところが、政権擁護側と倒閣側の双方が両者を混同している。

たしかに、彼が人格的に高潔か下劣かという判断は、告発内容の信憑性を左右する。しかし、それはどこまでいっても信憑性であって、事実性ではない。

後者に関しては、私は本来なら大きなスキャンダルであり、日本以外の国なら大問題に発展していたはずだと訝しく思っている(こちら)。

しかし、「だから彼の告発内容も嘘だ」とは決め付けない。

後者が暴露された経緯に関しては、私も官邸によるリークだったと憶測する。しかし、それまで不祥事を揉み消していたことが問題なのであって、暴露自体は無問題どころか、正しいとさえ考えられる。なぜなら、管理売春が疑われる風俗店に出入りする人物が日本の教育システムの総責任者だったこと、またそれを許す文科省の組織性は、私たちの社会にとって著しく有害だからである。常識で考えても狂っている。

ところが、倒閣側は、まさに官邸側の意図した議論の土俵に乗っかってしまい、後者に関して個人の自由だ何だと擁護し始めた。つまり、倒閣のために自分たちが掲げてきた価値観までかなぐり捨てたわけだ。彼らの中には別のところで慰安婦問題を提起する者も多いようだが、すると本当に動機が女性の人権のためなのか、という疑問すら沸いてくる。もはやただの反安倍派であり、フェイク左派・リベラル派でしかない。

本音はどうあれ公益の建前は崩していない「萩生田修正」

さて、その告発だが、7月10日、渦中の前川元事務次官が国会での証言に及んだ。

だが、従来の主張の繰り返しであり、とくに目新しい内容はないようだ(*私はニュースしか見ていない)。

とすると、彼の告発が正しいか否かは、再び例の文科省内部文書の是非に戻る。

その中でも、とりわけ「焦点」とされた部分が、京都産業大学を欠格にした「萩生田修正」である。前川氏もとくにこれを強調してきた。

今回の参考人証言でも、この追加条件について触れ、「加計学園しか残らないようにしたのはなぜか」と強調したらしい。

内部文書によると、元の文面は以下だった。

(前略)全国的見地から、現在、獣医師系養成大学等のない地域において獣医学部の新設を可能とするため、関係制度の改正を直ちに行う。

それを、萩生田光一官房副長官が次のように修正指示した(赤字部分)。

(前略)全国的見地から、現在、広域的に獣医師系養成大学等の存在しない地域に限りおいて獣医学部の新設を可能とする認めるため、関係制度の改正を直ちに行う。

これで京都が落選したから、「疑惑のポイント」として脚光を浴びた。

ところが、いくら読んだところで、この文面からは「私情・私利私欲」のニュアンスは見出せない。公益の観点から見て、至極妥当な判断と言わざるをえない。

現時点で、広域的に獣医師系学部の存在しない地域を優先的に新設の対象とすることは、おかしくも何ともない。当たり前の戦略である。私だってそうする。

言ったように、私個人は安倍政権の縁故主義をかなり疑っている。

萩生田氏の本音(*推測)
(いやあ、加計理事長には私も世話になってきたし、総理も「早く決めちゃいなよ」とせかしているから、今回は京都に泣いてもらわないといかんなあ・・)

萩生田氏の建前
「全国的見地からして、広域的に獣医師系養成大学等の存在しない地域に限り、獣医学部の新設を可能とするべきではないか、キリッ」

たぶん、真相はこんなところではないかと、私は邪推している。

ところが、真の動機や本心がどうであれ、公益の建前を崩していない以上は、私情裁定と決め付けることはできない。私情であってもその建前と一致していればいい。

だから「萩生田修正」は妥当と思われる。

しかも、文科省が作成した想定問答集(例の内部文書の一つ)の中で、同省自ら追加条件の正当化のロジックをこんなふうに捻っている。

つまり、「水際対策を行うに当たり、広域的に獣医学部が存在しない地域には必要ではないか」という観点を、自身で提起しているのである。

まあ、事務方だから、無理やりでも政治側に合わせなければならないのだろうが、それでもその不自然さを感じさせないほど、一定の説得力がありはしないか。

繰り返すが、別に萩生田氏でなくとも、彼と同じ立場にあったら、誰だって公益上の観点から京都を落として、四国を取るのではないだろうか。

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(フリーランスライター・山田高明 個人サイト「フリー座」