利用者を想像すればウェブアクセシビリティは改善できる

二つの記事『職員のまじめさが役に立たない自治体サイトをつくる』『最も役に立たない自治体サイトの機能』で、自治体サイトが搭載しがちな文字拡大や色変更などの支援機能が役立たないと説明した。ブラウザ側がすでに同じ機能を担っており、利用者はそれを利用してサイトにたどり着くので、自治体サイトに改めて支援機能を搭載する必要はない。

これについて『みんなの公共サイト運用ガイドライン』は次のように言及している。

ホームページ等の提供者に求められるアクセシビリティ対応とは、ホームページ等においてそのような支援機能を提供することではなく、ホームページ等の個々のページをJIS X 8341-3:2016 の要件に則り作成し提供することにより、利用者がそのページを閲覧できるようにすることです。

ガイドラインを出したにも関わらず残念サイトが多いだから、ガイドラインの普及啓発にいっそう努力しなければならない。総務省には強力に施策を展開するように求めたい。

ところで、このように残念な事態は利用者を想像すれば防げる。

仙台市ガス局は利用者がガス漏れに気づいたら、応急処置の後、すぐに連絡するように求めている。しかし、サイトに表示されているのは『ガス漏れ受付専用電話(24時間対応)』の電話番号だけだ。電話によってガス漏れを伝えられない発話障害や聴覚障害のある人はどうすればよいのだろうか。

ガス漏れに気付く利用者の多様性に思いがいけば、ファックスでもメールでも連絡できるようにしたはずだ。さいたま市消費生活総合センターも同じ間違いをしている。ページトップに「そうだ困ったときは相談しよう!」と電話番号が掲載されているが、代替連絡手段は近くに見当たらない。

ウェブアクセシビリティ対応の第一歩は、多様な利用者を想像して、それらの人々が困らないように配慮することだ。