さる8月7日、お辞めになったばかりの塩崎元厚労大臣も参加した、養子縁組緊急シンポジウムの要旨をご報告するとともに、今後の社会的養育の世界について記します。
来たくても来れなかった、全国の関係者の方にお読みいただけたらと思います。
新しい社会的養育ビジョンについて
・塩崎元大臣「社会的養育ビジョンは驚きとともに受け止められたが、児童福祉法改正の内容がまとまっただけ。法改正からの流れからいくと必然」
・塩崎元大臣「施設入所停止等も過激だという意見があったが、『原則』だし、様々な留保条件もある。子どもに被害があるようなことはあってはいけない。」
・塩崎元大臣「社会的養育ビジョンを実現するには、予算や人材育成が重要になる。そこは全力で予算の分捕り合いを乗り越えていかないといけない。大臣は降りたが、自民党内の社会的養護議連からバックアップする」
不正な養子縁組事業者は本当に取り締まれるのか
・山本香苗元厚労副大臣「それができなければならない。許可制の詳細を詰める際に、不正事業者を念頭に、実効性のあるルールを詰めていくことになる」
養子縁組事業者への補助金について
・厚労省成松課長「補助に関しては概算要求していく予定であり、忘れているわけではない。」
民間事業者との連携に消極的な児童相談所について
・音喜多都議「情報公開を進めることで、促進に積極的な自治体とそうでない自治体を可視化していく。東京都はこれまでデータの開示にも積極的ではなかったので、議会からしっかりと求めていきたい」
シンポジウムを終えて
・より詳細と臨場感のあるまとめを、参加した音喜多都議が(何も頼んでないにも関わらず)Twitter実況してくれました。興味のある方は、こちらをご覧ください。
https://togetter.com/li/1138290
・当初懸念されていた事業者補助の検討具合に関しては、一応厚労省も考えているようで、後は具体的に機能する金額が出されるか否か、といったところで、引き続き関係各所はパブコメを出す等、積極的な意思表示をしなくてはいけない状況です
・「新しい養育ビジョン」に関しては、塩崎前大臣の熱い思いがほとばしっていましたが、実現にはしっかりとした予算が必要になるのですが、彼自身が大臣ではなくなってしまったこと、政府の中に彼の志を継ぐ方がいなさそうなのが、最大の懸念点です。議連の会長から積極的に後押しをする、ということですが、やはり政府内にも熱量を持って仕事にあたる人がいないことには、進まないリスクがあるでしょう
・「新しい養育ビジョン」は画期的ですが、質の高い里親が増やせなければ絵に描いた餅ですし、さらには現場の混乱、ひいては子どもたちが犠牲になってしまう可能性もあります。ビジョンを実効性の高いものにするためには、民間がしっかりと後押しをしつつ、政治的に強力に推し進め、ちゃんと予算を獲得できないとダメでしょう
・大きな障壁は、社会的養護業界が、施設派と家庭養護推進派で長年いがみあっていること。本来であれば結束して政治的なパワーを確立できるにも関わらず、第三者から見たら内ゲバやってるようにしか見えず、共感の裾野を広げられないでいます。これは非常にもったいないことです
・施設も家庭養護も、「手法」なんだから、「目的」で合意をして、手法についてはファクトとデータに基づいて現実感のあるラインでバランスとっていくしかありません。そのためには、立場を超えて対話と信頼を重ねていくしかないでしょう。
・というわけで、みんなこういうシンポなり、対話の場をつくっていきましょう。オフィシャルな場だけでなくて、一緒に飯食ったり、現場で話したりしていきましょう。考えは同じになる必要はなく、「俺とお前の考えが違うのは分かった。ただ、そういう考え方もあるな、ということも分かった」となればひとまずは良いのではないでしょうか。
おまけ(議論の見える化)
ネット上では色々な意見が出ていて、それが一覧して観れると論点の概観が観れるのではないかと思って、ご紹介。必ずしも僕の意見と同じではないですが、多様な意見が出るのは大切。
・養護施設への支援を行う慎泰俊さんのブログ
・里親に預けられた当事者であった菊川恵さんのブログ
社会に育まれた立場から「新しい社会的養育ビジョン」について思うこと
・家庭養護を推進してきた音喜多都議のブログ
編集部より:この記事は、認定NPO法人フローレンス代表理事、駒崎弘樹氏のヤフー個人ブログ 2017年8月15日の投稿を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。