臍帯血輸血で逮捕;日本のメディアは最低だ?

中村 祐輔

院長が逮捕された「表参道 首藤クリニック」の旧サイトより(編集部)

民間クリニックが他人の臍帯血を国に無届けで投与していた問題で逮捕された。面白いことに、メディアによって取り上げる角度が微妙に異なる。「再生医療安全性確保法」違反には間違いないが、無届けで行われたことが問題なのが、白血球の型(HLA)が合わないことが問題なのか、外国人相手に大金を巻き上げていたことが問題なのか、どのように臍帯血を入手したのか、臍帯血利用の手続きが公正に行われていたのか、視点が少しずつ違っているのだ。

これまでは法律がないので取り締まれなかったと言っていた官僚もいたが、どこからみても「詐欺罪」だし、有害事象や死者が出ていたなら、立派な「傷害罪・傷害致死罪」と思うのだが?そして、以前にも触れたが、このような行為は国の恥である。「日の丸」に泥を塗る行為である。他人の細胞を注射や皮下などに注入すれば、異物の侵入を感知した免疫系細胞がそれらを排除しようとするのは、少しでも医学を学んだ人間なら常識だ。届け出をしていたかどうか以前の問題のはずだ。そもそも、他人の臍帯血を治療と称して利用するなど、学生時代に勉強していたのかどうかはなはだ疑問だ。お金儲けにしか興味のない人物が、医者という肩書を持つと碌なことがない。

それにしても、日本のメディアは愚かだと思う。逮捕されると大騒ぎするが、まともな取材能力さえあれば、警察が動かなくとも、先行して社会のために記事化したり、報道で取り上げることができるはずだ。私は昨年の12月25日のブログで、国際化した白衣を着た詐欺師の話を取り上げている。まともな感覚さえあれば、1社くらい逮捕される前に取り上げてよさそうなものだ。

社会のため、患者さんのためと口先で綺麗ごとを言っても、所詮はこの程度の実力と見識しかないのだろう。10年ほど前までは、もっと骨のある記者もいたが、日本全体の機能不全が加速化してきたのかもしれない?


編集部より:この記事は、シカゴ大学医学部内科教授・外科教授、中村祐輔氏のブログ「中村祐輔のシカゴ便り」2017年8月27日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。