【映画評】トリガール!

提供:ショウゲート

一浪して理系の大学に入学した鳥山ゆきなは、なんとなく流されて生きてきた女子大生。入学早々、独特の理系のノリにカルチャーショックを受けていたところ、一目ぼれしたイケメンの先輩・高橋圭に誘われるままサークルに入部してしまう。そのサークル・TBTは、二人乗り人力飛行機で鳥人間コンテストを目指す人力飛行サークルだった。一緒にコンテスト出場を目指そうと誘われたゆきなは、圭とコンビを組むはずが、実際に組むことになったのは、圭の元飛行パートナーでヤンキー風の先輩・坂場大志だった…。

ノリで人力飛行サークルに入った女子大生の奮闘を描く青春ラブコメディー「トリガール!」。小説家の中村航が、母校の芝浦工業大学の人力飛行サークルをモデルに描いた人気作が原作だ。二人乗り人力飛行機という素材がまず新鮮で、訓練や鳥人間コンテストの詳細も、興味深い。毒舌で体育会系の女子大生、ヤンキー系男子学生、王子様系男子学生と、キャラも抜群に立っている。

本作で最も感心したのは、新境地ともいえる個性派ヒロインを演じる土屋太鳳の輝きだ。今まで演じてきたような、ピュアで胸キュンの美人女子(高校生)役に、いいかげん食傷気味だったのだが、今回は、毒舌で、早口、体力に自信があって、大嫌いなヤンキー風先輩と徹底的に張り合う、ずっこけ女子の役なのだから面白い。しかも、これがかなり可愛い。

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間宮祥太朗演じる、過去のトラウマから抜けきれない坂場先輩に「チビ!」「痩せろ!」と怒鳴られれば、土屋太鳳のゆきなは「てっぺん取るって?!二次元限定のクローズかぶれが!」とやり返す。コンテストに向け体重を落とし、ヘロヘロ状態になれば、唐揚げ欲しさに本気でジャンプするなど、完全に壊れたキャラを怪演。坂場とゆきなは互いにののりしあい反発することで不思議な化学反応を起こし実力を発揮する凸凹コンビなのだ。

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すったもんだの末についにコンテスト出場の日を迎えるが、本番の飛行中の掛け合いは、青春映画らしからぬ、まさかの展開が待っている。ちょっとしつこい轟二郎ネタや、全員メガネのヴィジュアルなど、やりすぎ感もあるが、それもまたコメディーの妙味である。それにしても鳥人間コンテスト、こんなに熱く過酷なレースだったのか。色んな意味で驚きの痛快作だった。
【65点】
(原題「トリガール!」)
(日本/英勉監督/土屋太鳳、間宮祥太朗、高杉真宙、他)
(奮闘度:★★★★☆)


この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2017年9月2日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。