舞妓とは、京都の祇園を中心とした五花街で、舞踊、御囃子などの芸で宴席に興を添えることを仕事とする芸妓の見習い段階の少女を指す。舞妓特有の厳しいしきたりがあり、かなりの忍耐が必要とされる。また、舞妓が日中に、花街や花街以外を出歩くことはめずらしく、多くは変装舞妓(舞妓体験してる人)とも言われている。
今回、紹介するのは『京都花街の芸舞妓は知っている 掴むひと 逃すひと』。著者は竹由喜美子(以下、竹由氏)。14歳から踊りの稽古をはじめ、16歳で舞妓になり、5年後に襟替えをして芸妓となった。舞妓の仕事は奥が深いが、私たちが応用できるものはないか探ってみたい。アゴラ出版道場でお世話になっている「すばる舎」が担当している。
仕事における安請け合いは禁物
花街特有のことばで「こかす」というものがある。芸舞妓が客から何かを頼まれたり、誘われた際に、それをいきなり断れない場合に使用する。例えば、母さんや姉さんに相談すると「それやったら、わたしにこかしとき」というように使用する。
「ありがたいお話なのですが、お母さんに許してもらえなくてと・・と使います。『こかす』というのは、お母さんや姉さんなど、『誰かのせい』にすること。自分としてはお引き受けしたい気持ちはやまやまだけれど、お許しがでないものですからと、角の立たないようにするための方便であり知恵と言えるでしょう。」(竹由氏)
「その話をある経営者にしたところ、『会社ではできないし、したらいかんことやな』と。その理由をうかがいますと、営業マンが取引先の提案について、『いい案ですね!会社に戻って上司に話をします』と言い、後日、『課長がうんと言わないんですよ』などと上司に『こかす』と問題を生じさせかねないのだそうです。」(同)
このような「こかし」を使って仕事をしている人をたまに見かける。たしかに印象はよくない。その理由はなんだろうか。読者の皆さまも一緒に考えてもらいたい。実にシンプルな理由だが、「なるほど」と思うことだろう。
「まず、営業マンが、力量や能力を疑われます。『いい案だと言っていたのに、上司をうんと言わせることができなかったとは大したことない』と。上司も『頭の堅いヤツだ』ならまだしも、『そんなヤツが課長を務める会社なんかはダメだ』と信頼性にまでおよぶこともあります。次のようにヒートアップする可能性もあります。」(竹由氏)
「『うちの担当に、そんな無能な営業マンをつけるとは、うちを軽んじているのか』と、怒りに発展していくことも想定しなければなりません。うまく収められない場合、相手の怒りがどこに向かうか考えなくてはいけません。」(同)
仕事では上司に「こかす」ことはできないということになる。相手はどう受け止め、怒りの矛先がどこに向かい発展するのか。そこを十分に踏まえて行動をとらないと、営業マンも無能、上司も無能、という烙印を押されかねない。
仕事に応用するにはある条件が必要
では、仕事に「こかす」を応用することはできないのか。
「花街で『こかす』が許され通用するのは、厳然たるタテ社会だからです。花街では、『言い訳は、口答え』と言われます。どんな事情があろうと、不始末があったなら、言い訳は通用しません。仮に、言い訳をしようものなら、周囲の誰もが『言い訳は、口答え』と唱和できるくらい、共通の認識です。」(竹由氏)
「それくらいヒエラルキーといいますか、上下の関係が明確で、お客様など部外者のかたもそれを知っておられ、お母さん、姉さんがノーと言ったならそれはもう覆しようのないことだと受け止めていただける。そういう世界だから『こかす』がOKなのであって、検討があって結論に至る会社組織には向きません。」(同)
仕事に応用するには、「会社」に「こかす」のがいいそうだ。十分に検討したことを前置きして、「当社の方針ではお受けしかねます」、「会社の状況が許さないものですから」と「こかす」のであれば、まだ被害が少ない。いずれにしても決定権がないなら、軽々しく「いい案ですね!」などと安請け合いをしてはいけない。
さて、話は変わるが、実は約3年半ぶりに出版をした。タイトルは『007(ダブルオーセブン)に学ぶ仕事術』で、私にとっては9冊目の本になる。アゴラでは、「ビジネス著者養成セミナー」という著者希望者のためのセミナーを隔月で、「出版道場」という出版希望者のニーズに応えるための実践講座を年2回開催している。
私は、著者や出版社から献本されたなかで、ニュースとして相応しいものを紹介記事として掲載している。今回はそうしたなかで、記事が編集者の目に留まり出版にいたった。読者の皆さまへ感謝としてご報告を申し上げたい。
参考書籍
『京都花街の芸舞妓は知っている 掴むひと 逃すひと』(すばる舎)
尾藤克之
コラムニスト
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