北朝鮮6回目の核実験:面子を潰された米中首脳

中村 祐輔

トランプ氏の邸宅を訪問した当時の習氏(トランプ氏Facebook:編集部)

ついにと言うか、やっぱりと言うか、北朝鮮は核実験を行った。水素爆弾の可能性が高い。10日ほど前、トランプ大統領は「われわれは金正恩をレスペクトしているし、彼らもわれわれをリスペクトしている」とスピーチで述べた。ホンマかいなと思ったが、やっぱり、全くの空想で北朝鮮は米国を馬鹿にして挑発を続けている。米中会談後、中国に期待する発言を続けていたが、中国が本気なら、こんな状況にはなっていないはずだという理解に欠けているのではないか?

トランプ大統領は、中国に期待し続けているようだが、その根拠が見えてこない。日本は、北朝鮮の発射したミサイルが、北海道上空を通過するのを黙って見過ごす状況で、完全になめられている。もし、ミサイルのトラブルで日本の領土に落下していたら、どうすべきなのか、それをはっきりさせておくのが、危機管理ではないのか?

かの国は、何十年に渡って国際社会を欺き続け、とうとう核保有国になってしまったのだ。外交努力が空を切り続けてきた結果だ。核放棄することを望むというような甘い幻想から覚める時なのだ。もし、北朝鮮が核爆弾をもってして、日本を脅してきたらどうするのだ。北朝鮮の漁船が日本の経済水域で操業しても、「僕ちゃん、核爆弾が怖いから、好きにして」と黙って見過ごすのか!各新聞社の回答を聞きたいものだ。そんな事が起こるはずがないという、夢見る夢子ちゃんのような甘い見通しなど、もうたくさんだ。力には力という抑止力が必要なのだ。かつての冷戦がそれを証明しているのではないのか。

それに加え、東京では某新聞社の記者が、官房長官に、まるで北朝鮮の手先かと思えるような質問「(米国と韓国に)金正恩・朝鮮労働党委員長の要求に応えるように、冷静に対応するように政府として働きかけているか」をしたと報道されていた。この新聞社はどんな思想を持っているのか、信じがたいものがある。これまでの歴史的背景を知っていても、この相手を盲目的に信じることができるこの記者の純粋さは驚嘆に値する!?

核兵器を含め、戦争に対する備えなど、なくて済めば、いいに決まっている。しかし、警察がいなければ悪人がはびこるように、悪に対する備えは絶対的に不可欠なものだ。国と国の関係でも同じだ。軍備がなければ、そして、抑止力がなければ、領土と国民の生命は、悪の心を持った国によって脅かされる。それが眼前に迫っているのに、危機を煽ると政権を攻撃するのは私には信じがたい。

こんな当たり前のことを前提に備えをどうするのかを議論ができない日本と言う国は、世界的に見ても稀有な国だ。「戦争は嫌だ」と誰でもそう思う。しかし、今の東アジアの現状を見ても、なおかつ、「軍備を持てば戦争につながる」との短絡的な考えを捨てきれないのは、やはり、戦後70年あまりの平和ボケの後遺症だと思う。トランプ大統領が、次の手をどう打つのか。目を逸らしてはならない。すぐに、戦火が開かれるかもしれないのだ。


編集部より:この記事は、シカゴ大学医学部内科教授・外科教授、中村祐輔氏のブログ「中村祐輔のシカゴ便り」2017年9月4日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。