北朝鮮核開発は、24年前に仮想戦記小説の題材になっていた

外務省

90年代に仮想戦記小説はブームとなった。
頻繁に取り上げられたテーマは、ミッドウェイ海戦とレイテ海戦である。どちらも、指揮官の判断しだいで勝敗は逆転するかのように思える。
今年3月に急逝した作家、佐藤大輔は、小説家としてのデビュー作『征途』において、レイテ海戦を扱った。
「レイテ湾直前で栗田艦隊が反転せず、そのまま進撃したらどうなったか?」
この疑問に対する佐藤大輔の答えは、
「米軍の日本侵攻が遅れて、北海道にソ連軍が上陸し、日本は南北に分断される」
というものである。
日本軍の勝利は日本のためにならず、むしろ、災いになるという皮肉な解答だが、いかにもありそうに思える。史実でも、ソ連は米国に対して、対日参戦の見返りとして、北海道釧路留萌線の北側を要求していたからだ。
小説『征途』においては、終戦後、北海道北半分と南樺太を領土とするソ連の傀儡国家<日本民主主義人民共和国>が誕生し、赤色独裁者による支配が世襲化する。北朝鮮のパロディである。
「たかが小説」と侮れない。近頃の北朝鮮の行動は、小説『征途』の<日本民主主義人民共和国>と全く同じだからである。
核武装した<日本民主主義人民共和国>による脅迫を、核を持たない<日本国>がどうやって乗り切ったかを知りたい方は、今月中にも発売される『征途 愛蔵版』を読んでいただきたい。
詳しい設定を知りたい方は、wikipedia征途を参照。
今から24年も前に、北朝鮮核開発問題を取り扱う娯楽小説を執筆した作家がいたことを知ってほしい。そして、核兵器で周辺国を威嚇し、交渉相手にすらなりそうもない隣国を、どう取り扱えばいいのかを考えてほしい。
井上晃宏(医師)