専用電波が利用効率を下げている

山田 肇

日本経済新聞に『駐車場料金 ETC徴収の実験公開 中日本高速』という記事が出た。高速利用料金の支払いに使うETCで駐車場料金の精算を行うシステムを開発中だそうだ。

出来て当たり前で何の驚きもないシステムだが、なぜわざわざ公開実験を行うのだろう。それには電波免許の在り方が関係している。

ETCにはDSRC(専用狭域通信)という技術が用いられ、5800メガヘルツ帯の周波数が占用されている。この専用周波数の用途を広げるように総務省に電波免許の使用条件を定めてもらうために、中日本高速は公開実験を実施したわけだ。

ETCの専用周波数がETCにしか利用できないのは利用効率は悪く、他用途にも利用できれば効率は上がる。電波の有効利用という観点では中日本高速は正しい方向に動いている。

駐車場料金の精算はDSRCでしかできないだろうか。そんなことはない、スマートフォンからBluetoothやWiFiで支払えばよいからだ。BluetoothやWiFiのように用途を限定しない汎用電波の利用なら、SNSメッセージを交換している隙間時間に駐車場料金を払うこともでき利用効率は一層上がる。一般に、専用周波数よりも汎用電波のほうが利用効率は高い。

わが国には、過去の経緯で専用周波数が与えられたが普段はほとんど使っていない電波が多数存在する。これを汎用電波に移せば周波数に空きが生まれ、この空きを汎用電波に利用させるということを繰り返していくと、電波の利用効率が高まっていく。

米国ではオバマ政権の発足当初にこの計画が動き出し、政府が利用する専用周波数についてもきびしく利用効率が問われた。最近、政府の規制改革会議が電波の有効活用について検討をスタートさせたが、米国よりも8年遅れの動きである。規制改革会議の議題には電波オークションも載っているようだが、これは世界の潮流からは20年遅れの議論である。

人々がスマートフォンを常用し、IoTの展開も期待される今、電波の有効利用は避けて通れない政策課題である。それにしても日本政府の取り組みは遅すぎる。