若狭新党の「一院制」は目くらましに過ぎない

与謝野 信

小池国政新党とも言える若狭議員による新党は、いまの衆参二院制を一院制にすることを目玉政策にするとのことである。

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この突然出てきた政策を新党の政策の中心に据えるのは新党に対する「野合批判」を避けることだけを目的とした「目くらまし戦法」である。

目的が「目くらまし」なので、まともに一院制に対する問題点などを議論するのは彼らの思う壺である。なのでここでは二院制・一院制の議論はあえてしない。一番大事なのは「なぜ若狭・小池新党はこんな目くらまし戦法を取らなければいけないか?」という問いであり、そこから浮かんでくるこの新党の問題点である。

最初になぜ一院制などを唐突に新党の目玉に据えたかである。これはこの新党に結成における政策的・政治的必然性が無いからである。都民ファーストの会は多くの問題を抱えているが、少なくとも知事の政策を議会において円滑に進めるために知事の支援勢力で議会の過半数を取るという目的が存在していた。

それに対して国政における新党結成の意義はなんであろうか?都議会議員選挙の結果を受けて、「民進党には期待できないので、新たな反自民の受け皿となること」という点ではないだろうか?

「受け皿」の一点だけだと政策的一致がない旧民主党の二の舞になるし野合との批判を浴びる。なにかそれらしい「政策目標」が必要だったのである。

しかし、本気で憲法議論や経済政策論争を始めると絶対に話はまとまらない。実態は小池人気で選挙に勝つことが当面の目的で一緒になろうとしているだけで、そもそも政策的にはバラバラの人たちの集まりなのである。とはいえ自民の補完勢力と言われるのも困るので自民党と同じことも言いたくない。「とにかく小池さんを支持します!」というのも国政ではなかなか通用しない。

憲法や統治システムなどが関わる重たいテーマでなおかつこれまであまり議論されておらず、意見が割れにくい課題が好都合である。そこで「一院制」が出てくるのである。

そもそも本気で取り組んでも実現するのに何十年もかかるようなテーマであるから、はなから実行する気もないし「今後しっかりと議論を重ねていく」こと自体にはあえて反対する必要もないので新党に参加希望する潜在的議員にとっても受け入れやすい。

そして新党の結党意義を問われても、神学論争のような「二院vs一院」議論さえ展開すれば他の課題から逃れることができる。こちらが真面目であれば真面目であるほど彼らの術中にハマるのである。真面目な人間ほどこんな政策が目玉と言われれば、まともに一院制の問題点を指摘してしまったりするが、大事なのはこれが「目くらまし」だと認識して、この新党が抱える本来の問題を検証することである。

真の問題は明らかだ。実際はこの新党には政策的目玉はなく、重要課題での政策の一致を怠っており、日本が抱える多くの差し迫った課題の解決にあたって国民と真摯に向き合う気がないのである。

与謝野 信(よさのまこと)
1975年東京生まれ。英国ケンブリッジ大学経済学部卒業後、外資系証券会社に入社し、東京・香港・パリでの勤務を経験。2016年、自民党東京都連の政経塾で学び、17年2月の千代田区長選に出馬した(次点)。5月に亡くなった与謝野馨・元財務相は伯父にあたる。