今週のメルマガの前半部の紹介です。
世の中には、目を見張るような華麗な経歴や資格を持つ人材が稀に存在します。たとえば難関資格の代表である医師国家試験や司法試験を両方合格しているような人が典型ですね。
一方で、そういう人が経歴に恥じぬ立派な活躍をしているかというと、必ずしもそうではありません。上記の例でいえば、むしろ医者とも弁護士ともぜんぜん関係ない分野で働いていたりするケースが多いように思います。
なぜ目を見張るような華麗な経歴の人が、必ずしも目を見張るような華麗な活躍をしていないんでしょうか?そこには、キャリアとは何かを考える貴重な教訓が含まれています。
何でもできる人ほど実は何にも出来ない
経歴の華麗すぎる超ハイスペ人材というのは、実は大手の中途採用面接で結構遭遇したりするものです(理由は後述)。で、そういう「何でもできてしまう華麗な人」を観察してみると、たいてい以下のような特徴がみられます。
1.能力的にはきわめて優秀
当たり前ですが、なんといっても優秀な人が多いです。3分話しただけで地頭の良さがわかります。お勉強のできる人にはジックリ取り組んで答えを出すタイプも多いんですが、この人たちは決まって頭の回転が速いタイプです。
2.常に他者と競争するか、目標に向けて努力していないと落ち着かない
また、非常に競争心が強く、常に他者との競争に参加しているか、分かりやすい目標を掲げていないと不安なタイプが多いです。止まっちゃうと死んじゃうマグロみたいなもんです。資格をいっぱい持っている人はまずこのタイプですね。フォローしておくと、これはとても素晴らしい資質の一つだと思います。人に言われるまでもなく常に前向きに成長する原動力となるわけですから。
3.半面、何をどうしたいかといったビジョンは驚くほど薄い
一方で、面接などでやり取りをすると、本人が具体的に何をどうしたいのかといったビジョンが極めて曖昧、もしくはまったく欠落しているのが大きな特徴です。彼らは過去の経歴や資格については饒舌に語ってくれますが、これから何をどうしたいか尋ねると途端に口が重くなるものです。
まとめると、超ハイスペ人材というのは高い能力を持ち、競争や明確な目標(=難関資格取得など)には夢中になって取り組むけれども、具体的なキャリアのビジョンが非常に弱いかまったく無い人たちだというのが筆者の見立てです。
たとえば、医師国家試験に合格できる人はたぶん本気になって取り組めば8割くらいは司法試験にも合格できるはず。でも普通はそんなことはしません。単純に彼の志望するキャリアに必要ないから。でも、常に戦い続けねば気が済まない人はチャレンジしてしまうわけです。
とはいえ、超ハイスペ人材は真面目に実務経験を積むということが苦手なので、実際に良い職に就くことは稀です。組織に就職しても「きみ、医師と弁護士の資格両方持ってるから役員ね!」なんて抜擢されるわけでもなく、せいぜい弁護士資格に対して資格手当が支給されるくらいのもんです。
自然、なんとなく「ここは自分のいる場所じゃない」と感じ、超ハイスペ人材は自分を探す旅に出ます。だから中途採用市場で、そういう自分探し中の超ハイスペ人材によく邂逅するわけです。
筆者の経験でいうと、
「常人の2倍の能力があるけれども、自分のやりたいことがよくわかってない人」
と
「能力的には平々凡々だが、やりたいこと、実現したいことを強く意識している人」
を比べると、大成するのは圧倒的に後者だと思います。ホント、人間ってよくできてるなあと感心しますね。頭の良さって持って生まれたものでだいたい決まってしまいますけど、どれだけ仕事にコミットできるかで白黒つくんだったらもうそれこそ誰にでもチャンスはあるわけです。ぜったいそっちの方が社会は発展しますから。
ひょっとすると、そのことを誰よりも深く理解しているのは超ハイスペ人材自身なのかもしれません。彼らが旅に出るのは、より華麗な経歴を身につけることで、己の胸の中の空白を埋めようとしているような気もします。
以降、
超ハイスペ人材が政界に集うワケ
何でもできる人より、合わせ技で一本取れる人に
Q:「メンタルトラブルを予防するにはどんな方法がありますか?」
→A:「無風状態が長く続かないような工夫が必要でしょう」
Q:「消費税上げて教育費無償は若い世代にとってアリですか?」
→A:「高齢者向けの給付削ってやるか、素直に財政再建しろよと思います」
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編集部より:この記事は城繁幸氏のブログ「Joe’s Labo」2017年9月21日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はJoe’s Laboをご覧ください。