「果物経済学」なぜメロンは1玉300円と1万円があるのか?

こんにちは!肥後庵の黒坂です。

私たちの周囲にはたくさんの物が溢れています。スマホがあり、クッキーがあって、ペンやベッドがあり、街に出るとファストフード、服屋さん、楽器屋さんなどなど…。

これらの物には経済学の原理に従い、値段がつけられています。高い値段、安い値段などごちゃごちゃになっていますよね?でも不思議なことに同じメロンでもスーパーでは1玉300円、高級百貨店では1玉1万円のものがあります。なぜこのような極端な違いが生まれるのか疑問を感じたことはないでしょうか?

必需品は必ず安く売られる運命にある

世の中には「これがないと生きていけない。生活に支障をきたす」という必需品はものすごく安く売られ、その反対に「あってもなくても生活はできる」という嗜好品・贅沢品はものすごく高く売られています。

その代表格が電気・ガス・水道などのインフラです。電気を自前で用意できますか?スマホの充電をしたくても、自転車こいで発電なんて現実的じゃありません。また、現在の私たちが日常的に使っている安全で清潔なレベルの水を手に入れることは、個人では不可能に近いでしょう。

そして食品も同じです。お米や野菜・果物はそれがなければ明らかに生活に支障をきたす必需品ですが、必要性の高さを考えるとものすごく安く売られています。例えばお米は1kgで200円くらいですので、茶碗一杯150gだと30円程度という計算になり超激安です。

このようになければたちまちその日から生活に影響が出てしまう、生活必需品ほど安く売られていることが分かります。なぜかという必需品は政府主導でインフラを整え、生産者から買い取りをしたり、余剰に生産して貯蔵するなど絶対的に不足が出ないようにしているからです。必需品ほど手に入れやすく、絶対に不足してしまうことがないようになっているのです。

同じものでも嗜好品・贅沢品は高く売られる

見た目には同じものでも、そのカテゴリが必需品ではなく、嗜好品・贅沢品となると値段は数十倍、数百倍に跳ね上がります。

先ほどお水を例に出しましたが、水道の水はめちゃめちゃ安く買うことが出来ます。東京都の水道料金でいえば水道の水は1リットル/0.3円です。先ほどいった通り、必需品ですからこんなにも安く買うことができるわけです。

ところが、同じ水でも嗜好品・贅沢品となると状況は一変します。コンビニやスーパーで売られているペットボトルの水はどうでしょうか?同じ水でもこちらは2リットル/100円で水道の水の166という計算になります。それでもペットボトルの水は飛ぶように売れています。

今度はスーパーで売られているスイカやメロンを見てください。安いものだと300円とか、500円で買うことが出来ますよね?それじゃ東京・銀座の百貨店に売られている桐箱に入ったマスクメロンを見てみましょう。初めてあれを人は「あれ?見間違いか??」と目をこすって思わず二度見せずにはいられない値段がついています。1玉1万円超ですから、実にスーパーの33ですからね。

同じ水や果物でも嗜好品・贅沢品になるとものすごく高く売られます。

必需品は安さを、贅沢品は高さを求められる

ビジネスでより多くの利益を出したければ、販売するものを「必需品→贅沢品」へ移行する必要があります。というのも、必需品ほど安さを求められ、贅沢品は高さを求められるからです。

あなたが今朝顔を洗う時にひねった蛇口から出た水が、1リットル100円にするといわれたらどうでしょうか?いやいや生活できませんよね?高すぎて毎日風呂に入れません。掃除機をかける時の電気代が1分100円になったら??おとなしい日本人も声を挙げて「国民の生活を脅かす搾取を許すなー!」とデモが起こるでしょう。

この間、フランス皇室御用達の水が売られているのを見ました。750mlで1本734円だそうです。見たところとても人気で売れているみたいですが、あの水が1本10円だと多分売れませんね。あのお水は明らかに嗜好品・贅沢品に位置するもので、高いからこそ売れるわけです。

実は私自身も嗜好品は高さを求められるんだと感じる経験をしたことがあります。当店で取り扱っているマスクメロンですが、この間お客さまから「後2000円出すから、更に高次のグレードを持ったマスクメロンを売って欲しい」と言われました。同じようなことをデコポンでもイチゴでも言われます。あまりにお声が多いので、高級フルーツの中でも上位数%に位置する香りの高さ、見た目の美しさ、味わい深さなど多面的に見てより高品質なものを「特選メロン」「特選デコポン」として商品開発したほどです。

私のお店の肥後庵は家庭で消費するデイリーフルーツは置いておらず、贈答用のハイグレードなものだけを扱っているのですが、「もっと高くていいものは」と言われることはあっても「もっと安いものは」と言われたことがありません。

家庭向けのスーパーのメロンは1玉300円で売られ、百貨店で売られているメロンが1玉1万円超になるのは、それぞれ必需品・贅沢品とついているカテゴリの違いによるものです。また、必需品はより安く、贅沢品はより高く販売されることを求められるから、というのが果物経済学の謎を解くメカニズムなのです。

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。