市町村議員は「抽選」という選択肢があってもいい

副町長をしていたとき、町議会議員の皆様には本当にお世話になった。個々の議員は、立派な方が多い。でも、ずっと問題として捉えていることがある。

鹿児島県長島町の議会構成は、

●60代以上(1人だけ50代)
●男性
●自営業 or 元公務員

の方ばかりで、女性や若者が全くいないことだ。
これでは、多様な民意の反映はなかなか難しい。

では、なぜ若手や女性の議員がいないのか?

1つは、報酬が低いこと。大都市と異なり、小さな市町村では、兼業や年金を前提にしているので、議員報酬だけで家族を養って生活することは難しい。

でも、それより大きな問題は、議員になった後の選択肢が少ないこと。一度、議員になると、生涯政治家をやらなければならないという風潮が強い。元の職場に戻るということは、極めて難しい。それでは、若い人で目指す人は少ないだろう。

人生100年時代では、回遊人材を受け止めるということが大事だ。サイボウズの育自分休暇のように、研究で休職したり、あるいは他社で働いても、元の職場に戻れる仕組みをつくれることが大切だと思う。

いっそのこと、市町村議員も、裁判員制度と同じように、「抽選」という選択肢があってもいいのではないか。

「抽選」ならば、女性や若者も、男性・高齢者と同じように選ばれるだろうし、議員を務めた後に元の職場に戻ることも可能だろう。

裁判員制度は1つの事件ごとに選ばれるが、市町村議員は予算・決算を踏まえると、1年以上の任期は必要だろう。抽選で選ばれた人の昨年までの給与を踏まえて報酬を支給するか、あるいは、十分に兼業できるように議会の開催時間や仕組みなどを配慮することが大切だろう。

例えば、学校の先生や警察官も、それぞれ教育や防犯・防災のプロフェッショナルだから、市町村議会議員としてその知見を生かしてもらい、また、あるいは、並行して、先生や警察官として働いてもらうことがあってもいいのではないか。

ひょっとすると、国だって、「抽選」枠があってもいいのかもしれない。(議院内閣制の国は、二元代表制の自治体とは違うが)仮に抽選議員には議決権を与えなくても、抽選議員と選挙で選ばれた国会議員との間で大きなギャップがあるならば調整が図られるだろうし、

永田町では当たり前になっていることも、素人の新鮮な目で見ると、素朴な疑問が湧いてきて、それが政治を良くしていくのではないか。

国も自治体も、多様性をどう確保するかということは、よくよく議論した方がいい。

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<井上貴至 プロフィール>

<井上貴至の働き方・公私一致>
東京大学校友会ニュース「社会課題に挑戦する卒業生たち
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<井上貴至の提言>
間抜けな行政に、旬の秋刀魚を!


編集部より:この記事は、井上貴至氏のブログ 2017年10月1日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は井上氏のブログ『井上貴至の地域づくりは楽しい』をご覧ください。