政府が発表したバイアスされた世論調査

山田 肇

街は選挙一色だが別の話題。内閣府は『障害者に関する世論調査』の結果を9月末に公表した。報じたメディアは少ないがそれでも探したところ、時事通信の配信記事が見つかった。記事には「障害者施策の周知が進んでいない現状が浮き彫りになった。」とあった。一方、朝日新聞は「国民の8割が「世の中には障害のある人に対して差別や偏見がある」と思っていることが明らかになった。」と伝えていた。

折角の調査を報道した点で時事通信や朝日新聞の姿勢はよい。しかし記者は大きな問題に気付いていない。調査は国民全体の意識をきちんと反映していないのである。

調査では回答者の属性を聞いているが、「あなたの身近に障害のある人がいますか」という質問に対して、36%が自分自身又は家族が障害者と回答している。これはわが国における障害者の比率よりも高い。『平成28年度障害者白書』によれば身体障害者・児の総計は394万人、知的障害者・児は74万人、精神障害者・児は392万人である。これらを単純に合計しても人口比は10%以下に過ぎないから、内閣府の世論調査は自らが障害者であるなど障害に関心のある人が多く回答している。そこで内閣府に電話で聞いたが属性バイアスは特に補正していないということであった。

バイアスがあるにも関わらず、障害者権利条約を知っている・聞いたことのあるの合計が21%、障害者差別解消法では27%に過ぎない。事態は「障害者施策の周知が進んでいない現状が浮き彫りになった。」どころではなく、障害者やその家族にも障害者施策の周知が進んでいないのが現状である。

政府の取り組みに大きな課題があることが示唆される調査結果である。障害者政策を一から立て直すと公約する政党が出現するように期待する。