米10年債利回りは7月上旬に2.4%近くまで上昇していたが、その後低下トレンド入りし、9月上旬に2.0%近くまで低下した。この間に米10年債利回りが低下した背景として、イエレンFRB議長が謎とした足元物価の低迷があった。FRBの年内あと一回の利上げは見送られるのではとの見方もあり、金利を押し下げた。また、北朝鮮が相次いでミサイルを発射し、核実験を行うなど地政学的リスクも意識されて、リスク回避による米債買いもあった。
米10年債利回りの低下に合わせるようにドイツの10年債利回りも低下し、7月中旬に0.6%近辺にいたドイツの10年債利回りは9月上旬に0.3%近辺に低下した。ドイツの10年債利回りの低下の背景には米債が買われたことだけでなく、ユーロ圏の物価も低迷し、ECBの超緩和策の修正も極めて慎重に行うとの見方などもあったとみられる。
日本の10年債利回りも7月7日に0.105%まで上昇し、日銀が指し値オペを実施したタイミングがピークとなり、9月1日に10年債利回りが再びマイナスとなった。しかし、この水準がボトムとなり、今度は上昇基調となってきている。
日本の10年債利回りは足元、0.080%あたりまで上昇し、再び0.1%を試すかのような動きとなっている。米10年債利回りも9月上旬の2.0%近辺から2.3%台に上昇した。ドイツの10年債利回りも9月上旬の0.3%近辺から0.5%近くまで上昇している。
ここにきて日米欧の国債が売られている理由としては、足元物価は謎としても、9月のFOMCにおける金融政策見通しで、会合参加者の多くが年内1回の追加利上げを予想するなど年内利上げ観測が再燃したことも挙げられよう。また、2日に発表された9月のISM製造業景気指数が2004年5月以来の高水準を記録し、この日の米国株式市場は3指数ともに過去最高値を記録したが、米景気の好調さも米10年債利回りの押し上げ要因となっているとみられる。
ここに財政面の懸念も出てきている。トランプ大統領は連邦法人税率を35%から20%に下げる税制改革案を正式に発表したが、財源の問題があり、米国債の増発など財政悪化も懸念材料となりつつある。
日本では衆院選挙が実施されることとなったが、安倍首相は消費税の増収分の使途変更を表明した上で、2兆円規模の新たな経済対策を行うとしている。対抗馬となりそうな小池氏率いる希望の党は消費税の凍結を打ち出すなど、日本でも財政健全化に対する懸念が生じつつあり、これが日本国債を買いづらくさせている。
北朝鮮問題については、ひとまず軍事衝突は避けられるとの見方もあり、地政学的リスクの後退により、米債、ドイツ国債、日本国債ともに再度売られた側面もある。
このようにいくつかの要因によって、日米欧の国債の利回りは揃って上昇基調にあるが、注目は日本の10年債利回りがどこまで上昇するのかということになるのではなかろうか。再び日銀が0.1%で抑えに掛かれば、日本国債の利回りだけでなく、米国債やドイツの国債利回りも抑えられる可能性がある。しかし、日本国債の利回りだけが強制的に抑えられ、米国やドイツの国債利回りがさらに上昇するとなれば、日本国債を取り巻く状況に変化が生じる可能性もある。
編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2017年10月4日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。