ラスベガス銃乱射事件では59人が死亡、527人が負傷しました。間違いなく、米国史上最悪の事件です。
それでも、米国で銃規制の強化で決断するには大きな壁が立ちはだかる。全米ライフル協会(NRA)をはじめとした、銃所持の権利を支持する団体です。
彼らは、米議員に多大な寄付金を投じてきました。こうした団体からの寄付金額の9割は、共和党へ流れ込んでいます(注:2018年は同年の中間選挙に向けた寄付金を表す)。逆に民主党では、2012年のサンディフック事件もあってオバマ政権時に格段の縮小を示しました。ただし、2016年の米大統領選で注目を集めたバーニー・サンダース上院議員(バーモント州)はハンターであり、約11万ドルの寄付金を受けています。
(出所:OpenSecrets)
では、共和党議員の誰に寄付金が向けられたのでしょうか?銃所持の権利支持団体から最大の寄付金を得たのは、ティーパーティー寄りで知られ、2013年にはオバマケア向け予算に反対し政府機関の閉鎖の一因を作ったテッド・クルーズ米上院議員(テキサス州)で、36万ドル(約4,030万円)に及びました。2016年の米大統領選挙でも、比較的善戦したのでご記憶の方も多いでしょう。2012年の選挙で初当選したというのに、ぶっちぎりの1位というのは特筆すべきですね。
クルーズ議員より、このリストで注目すべきはトランプ政権で内務長官に就任したライアン・ジンキ前下院議員(モンタナ州)です。下院のツートップ、ポール・ライアン議長(ウィスコンシン州)、ケビン・マッカーシー院内総務(カリフォルニア州)の名前も確認できます。引退を表明済みとはいえ、トランプ政権に物申し医療保険制度改革(オバマケア)代替案移行を葬った一人であるジョン・マケイン議員(アリゾナ州)のほか、同性愛支持で中道寄りの声もあるロブ・ポートマン議員(オハイオ州)など、影響力の強い議員が名を連ねる状況。共和党が銃規制強化で一枚岩になるなんて、至難の業です。
(出所:OpenSecrets)
やはり、共和党と銃所持権利団体とのパイプは太い。トランプ米大統領が3日、銃規制強化の議論に対し「いずれの段階で」と語るにとどめたはずです。しかし、トランプ氏は過去に銃規制の強化に前向きな見解を示していたのですよ。2000年の著書”The America We Deserve”で「銃規制には概して反対の立場だが、対人殺傷用銃器派禁止を支持するし、銃購入には今よりわずかながら長い時間をかけるべきだ(I generally oppose gun control, but I support the ban on assault weapons and I support a slightly longer waiting period to purchase a gun.)」と明記していました。立場のシフトは、政治的あることは想像に難くありません。
余談ながら、筆者の主人はラスベガス銃乱射事件を受けて「もう絶対、米国には帰らない」とつぶやき、米国に戻る意思がないことをあらためて私に突きつけてきました。仕事をするには米国住まいが便利な筆者と、どっちがアメリカ人だか分かりませんよ。
(カバー写真:Rick Webb/Flickr)
編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2017年10月4日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。