ひとつのケーキを6人の子どもたちで分けようとしています。
誰もがお腹をすかせていて、少しでもたくさんのケーキを食べたがっています。どうやって分けるのが公平でしょうか?
「体重に応じて分ける」「体力のない子どもに一番多くいくように分ける」…等々、様々な考え方があると思います。
しかし、諸般の事情をすべて考慮の入れてしまうと、各人があれこれ主張を出し合ってまとまりません。やがてケーキが腐ってしまうかもしれません。
最も公平な分け方は、ケーキを切り分ける人が最後に残った一切れを取るという方法でしょう。
このルールを適用すれば、おそらくケーキを切る人はできるだけ正確に6等分しようとするはずです。
また、ケーキを切るところを全員がしっかり監視できる必要があります。舞台裏で勝手にケーキを切ることを許せば、切る子供がごまかすおそれがあるからです。
このような「公平性」と「公開性」の原理は、哲学者のカントが考えたものです。
毎日、正確に同じ時間に散歩をしたので、近所の人がカントが散歩する姿を時計代わりにしたと言われた、あのカントです。
これを現代社会にあてはめると、法律というルールを(最終的に)作るのは国会でありその構成員である国会議員です。
法律の作り手が、さきほどのケーキを切る役割の子供だとすれば、国会議員は一番最後の一切れを取らなければ公平性は担保されません。
規定がないのに育児休業を取得しようとした元議員がいましたよね。
不倫が発覚するまでは取得に賛成していた人もたくさんいましたが、私は生理的に受け付けませんでした。
Law Makerとして法律を作る権限を持った国会議員は、一番最後の一切れを取るべきであって、一番最初の一切れを取るべきではないと考えたからです。
育休に限らず、年金も同様です。
国民の年金財源がなくなっている状況下なので、法律を作る人達は自分たちの年金を一番最後に回すべきでしょう。ところが、実際は、国会議員の年金はとても恵まれているようです。
また、「公開性」という点では、日本の国会議員は政治資金収支報告書などで資金面の透明性を図っています。大臣等は個人資産の公開も行っています。
ただ、残念なのが「ケーキを切るプロセス」、つまり「法律を制定するプロセス」がまだまだ不透明だということです。政府のホームページがわざと不親切にしているのではないかと疑われるほど、立法プロセスが不明瞭です。
テレビや新聞では、断片的な政治家の言動が報道されますが、肝心要の法律制定プロセスが全く闇の中です。誰が(どの省が)法案を提出し、誰が所属する委員会で審議されて、どういう意見が出て、法案となって本会議に回された…という大まかなプロセスくらいは公開してほしいと思います。
ネットでなら簡単にできるはずです。
このように、法律制定プロセスを公開することによって、国民の国政への関心が強くなり、選挙も有意義なものになると私は思っています。
国会議員の選挙はアイドルグループの人気投票ではありません。
私達の権利義務に直接関係する法律という大切なものを作る人達を選ぶことなのです。
過去の実績がひと目でわかるような情報を、せめてネット上ででも開示すべきだと私は強く思っています。
編集部より:このブログは弁護士、荘司雅彦氏のブログ「荘司雅彦の最終弁論」2017年10月5日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は荘司氏のブログをご覧ください。