アゴラでは、「出版道場」という出版ニーズに応えるための実践講座を年2回開催している。その影響もあり、著者や出版社から献本されることが多い。今回は、『あなたはもっときれいになれる』(あさ出版)を紹介したい。いまは、個人のブランドを高め、見せていくかが重要な時代。考え方によっては「出版」もブランドの一つといえる。
著者は、余語まりあ(以下、余語氏)。ミス・ユニバース・ジャパン(MUJ)の評議員もつとめている。本書は外見・内面を美しくみせるための方法をまとめている。なかには「ミス・ユニバースを例に出されても」と感じる人がいるかも知れないが、女性はいくつになっても美しくありたいと思うもの。まずは記事を読んでいただきたい。
利他の精神が「品」につながる
――「品格」という言葉がある。その人やその物に感じられる気高さや品(本質)のことをあらわす。「品がある」「品が良さそうだ」と感じるなら、品格が備わっていることになる。言葉や行動から品格が溢れている人がいるが、身なりや気配り、さらに相手をおもんぱかり、敬意を払うことも品格につながるといえる。
「以前、品格について調べたところ、仏教用語の『上品、中品、下品』という言葉にいきつくことがわかりました。これは、『じょうぼん、ちゅうぼん、げぽん』と読み、極楽へ生まれ変われるかどうかの順番をあらわしているそうです。自分の存在が、どのくらい仏に近いか。どう生きるかによってランクが決まります。」(余語氏)
「そこで、私は考えました。仏に近いとは、どういうことなのか。品を大事にするということは、『自分目線』に立つところから、『他者目線』に立つことではないかと。『利他の精神』ではないかと思いました。人を助けたり、人を救ったり、つまり人のために生きる気持ちや行動ではないかと思いました。」(同)
――それは簡単なことではない。人間には煩悩があるからだ。本当の意味での「心の豊かさ」がなければ「人のために」という境地には行き着くことはない。少なくとも、金銭的・物質的な欲がある時点に行き着くことができない境地である。
「世の中ではたくさんの人が自分を磨くこと、自分の能力を上げること、ひいては自分の生活を豊かにしていくことに、一生懸命です。それはそれで、とても大事なことだと思います。その先に、『誰かに伝えていくこと』『誰かの役に立つこと』を実践していくことが、大切ではないかと思うのです。」(余語氏)
「品とは内面のこと。他者に奉仕する精神があって『品がある』につながるのではないかと思います。ミス・ユニバースは『見た目』ばかりを、評価の対象にしているわけではありません。知性、感性、人間性などの内面性なども重視しているからです。」(同)
内面の美しさとは何か
――次のようなケースがあったと仮定しよう。どのような行動をとることが望ましいだろうか。また行動の判断基準はなんだろうか。
「目の前に何かの選択肢が2つあらわれたとき、人は自分の基準に照らし合わせて判断します。たとえば、あなたが仕事に関する情報を手に入れたとします。あなた自身には意味のないものでした。しかし、あなたの周りのライバルにとっては有益なものでした。のどから手が出るほど欲しい情報です。どうするでしょうか。」(余語氏)
「自分の得にならないなら、黙っていることもできます。私は、『人としてどちらが美しいか』と、自分に問います。損得など考えずに結論を出すようにします。」(同)
――行動の結果、損をするか得をするかを気にするのではなく、「人として自分がどうありたいか」を考えることが大切である。わかりやすい事例を紹介しよう。
「情報を伝えても相手がそれを必要とするとは限りません。『耳に入れない』こともあるからです。以前、新聞の記事で、8月7日が『花の日』であることを知りました。私の知り合いにも、花屋さんを経営されている方がいます。彼女が以前、『売上を伸ばすために何か仕掛けたい』といっていたことを思い出しました。」(余語氏)
「頼まれているわけではないですし、お節介かもしれないけれど、お役に立てるかもしれない。そう思って、花の日にちなんだプレスリリースの仕掛けを伝えました。『検討してみた』『やってみた』と確認はしません。有意義だったかどうかはわかりませんし、もしかしたら私の自己満足にすぎないかもしれないからです。」(同)
――私の知人にアイデア豊富なプランナーがいる。酒がはいると「こうすべきだ」と情報提供してくれる。「オレの情報提供はタイムチャージで@3万円だから」。有難いこともあるが、面倒なときのほうが多い。このような時、伝える姿勢(つまりは品格)は非常に大切ではないかと思う。余計なひと言はすべてを台無しにする。
ミス・ユニバース・ジャパンは「見た目」ばかりが注目されがちだが、実は内面が大きな評価ポイントになる。余語氏が一貫して示しているのは、「内面の美しさ」である。本記事は「品格」を例にして構成してみたが、内面を磨くためのヒントが隠されているのかも知れない。この機会に品格について考えてみることも一考だろう。
参考書籍
『あなたはもっときれいになれる』(あさ出版)
尾藤克之
コラムニスト
<第3回>アゴラ出版道場開催のお知らせ
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