日米欧の中銀トップ、株高発言を回避

20ヵ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議12~13日、ワシントンで開催されました。併せて13~15日には国際通貨基金(IMF)の年次総会ならびに国際通貨金融委員会、世銀・IMF合同開発委員会が開かれ、要人発言が相次ぎましたよね。

今回の国際通過金融委員会(IMFC)でのメッセージは、「回復基調に慢心するべからず」。関連の要人発言は、以下の通りです。

イエレンFRB議長、15日のワシントンでの講演
「私のなかで最も有力な予測(my best guess)は軟調なインフレ推移は続かないことであり、力強い労働市場に合わせて物価は来年にかけ上昇していくと見込む」
「最新の経済金利見通しでFOMC参加者と私はインフレが2018年に上向き、2019年に目標値に達すると予想する」
向こう数年にかけ経済拡大を支援するため、ゆるやかな利上げが適切

ドラギ総裁、IMF年次会合での記者団に対する15日の発言
株式と債券は上下するが・・・バブルの状態(bubble situation)にあるとは思わない
「バリュエーションが高くなっている兆しが現れている市場は、優良不動産市場だ」
「特定の市場の問題を解決するために誤った決断はしたくない」

黒田・日銀総裁、13日の会議後の記者会見。演説内容はこちら
物価目標達成のために強力な金融緩和を継続すると説明
「各国の中央銀行ともよく注視しているが、今のところ目立った行き過ぎが生じているとは考えていない」
「米国や欧州、日本、中国、それから新興国も成長が加速、非常に心地良い状況という感じが強く、リスクについて触れてはいたが、今すぐ経済に影響が出そうだとはあまり皆思っていない」
記者団に対する15日の発言
「投資家の地政学的リスクへの関心、低すぎる恐れがある」

――日米欧は今回、金融市場に対し「株高はリスクと判断せず」といったトーンをそろえてきました。IMFC声明文では世界経済見通しと歩調を合わせ先進国を中心に低インフレに警戒を表明する半面、イエレンFRB議長はインフレが回復すると自信を深めます。この背景には、米9月消費者物価指数のコアが示す通り低インフレ環境でも12月利上げで金融市場の割高感を削ぐ決意が込められているのか、注視していきたいところです。
IMFCでの記念撮影、本当に”株高リスク”を警戒していないのでしょうか?

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(出所:International Monetary Fund/Flickr)

最後に、ムニューシン米財務長官の言葉も付け加えておきましょう。

ムニューシン米財務長官、13日付け国際通貨金融委員会(IMFC)声明
「税制改革やインフラ投資、規制緩和は大いに必要とされる米経済のダイナミズムを回復する狙い」
「(力強い成長のため)各国が最善の政策手段を見直すべきだ。・・・例えば民間投資の障害を縮小させ、民間主導の資本と労働移動に適切なインセンティブを与えるような
税制を保証するよう、再考すべきである」
「IMFは運営の効率化を望む。公共機関として、IMFは予算規律の見本として、かつ限定された資源を効率的に使う機関として見本となるべきだ」

――IMFの世界経済見通し10月版では税制改革の見通しを削除されたものの、しっかり税制改革をアピールしています。また共産党による関与強化を目指す中国に加え、IMFにも改革へのメッセージも忘れません。後者にしてみれば、新婚旅行に政府機使用の使用を求めたムニューシン米財務長官に指摘されたくないでしょうね。

(カバー写真:International Monetary Fund/Flickr)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2017年10月16日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。