根拠に基づく評価が行政を深化させる

山田 肇

東洋大学大学院公民連携専攻が第12回国際PPPフォーラムを開催した。今回のテーマは「シティ・マネジメント」で、米国・日本の先進事例を基にデータの利活用を中心に議論した。

このフォーラムのハイライトは、ロン・カーリー氏の講演にあった、施策の本格的な実施を決める前のステップを説明した次の図面である。

第一に、行政組織は住民の抱える課題を理解する。第二に、課題の発生原因となっている問題を特定する。第三に、問題を解決する方法を複数考え出す。第四に、複数の解決方法のすべてについてプロトタイプを試行する。最後に、どのプロトタイプがもっとも適切か評価する。その後に、評価の高かった施策が本格的に実施される。

ブルックス氏はIoTを活用したスマートシティにフロリダ州オーランド市を進化させようとしている。彼が例に挙げた犯罪の撲滅を例に取って上のステップを説明しよう。

住民は犯罪の多発に苦しんでおり、これが住民の課題である。発生原因は何か、マフィアがはびこっているせいか、それとも警察官の数が足りないのか。警察力の向上が中心的問題だとわかったら、どのように解決するか。警察官を増員するか、街中の防犯カメラの映像を収集するか。プロトタイプの試行と評価の末に、防犯カメラ情報の取得・緊急時にパトカーが走行する道路の青信号化に加えて、過去の犯罪情報を分析して警察官を予防的に配置することになった。一方で、警察官にボディカメラを装着させ、また音声を録音して活動を記録するようにしたという。

これらの発表について、パネル討論で僕は次のようにコメントした。

わが国でも「実証実験」が数多く実施されている。これらはプロトタイプの試行に該当する。しかし、その後の、どのプロトタイプがもっとも効果が高く効率的だったかを評価するプロセスがない。「行政の無謬性」という神話が根強いから、すべての実証実験は「成功した」とだけ総括されてきた。その結果、本格的に実施するのが適切な施策が決定することはなく、実証実験がさらに重ねられることになっている。

施策は有効性と効率性で客観的に評価する必要がある。このところEBPM(根拠に基づく政策形成)の重要性が叫ばれているが、米国はすでにその方向に動いている。彼我の相違を実感させられたフォーラムであった。