【映画評】斉木楠雄のΨ難

PK学園に通う高校生、斉木楠雄は、テレパシーやサイコキネシス、透視、テレポートなど多彩な超能力を持ちながら、普通に生きることを望み、その才能を隠して高校生活を送っていた。斉木の周囲は、斉木のことが気になってしかたない自意識過剰の美少女や、バカすぎて思考が読めない同級生など、変な奴ばかり。毎年恒例の一大イベント、文化祭を迎え、同級生たちがトラブルを巻き起こす中、気が付けば、たかが文化祭で地球滅亡の危機が迫っていた…。

超能力を持っているため次々に災難に巻き込まれてしまう高校生・斉木楠雄の高校生活を描く学園コメディ「斉木楠雄のΨ難」。ちなみに、Ψ難は“さいなん”と読む。原作は、独特の世界観でファンが多い麻生周一の人気ギャグ漫画だ。漫画の実写映画化への出演が続く山崎賢人が、予告編ではそれすらも自虐ネタにしながら、ピンクの髪にピンクのアンテナ、緑のサングラスという笑撃のルックスで怪演している。主人公・斉木楠雄は、感情は表に出ず、せりふもほとんどなく(よくしゃべるがほぼ心の声のナレーション)、変人揃いのクラスメイトに手を焼きながら、人知れず地球の危機を救ったりしているのだ。山崎賢人が今まで演じてきた、繊細で心優しい美少年や、ツンデレキャラの学園の王子様とは真逆の役柄だが、福田組初参戦ながら、存在感を示している。

「銀魂」のやりたい放題を見たせいか、福田雄一監督にしては、ギャグのはじけっぷりがおとなしい気がするが、それでも橋本環奈、新井浩文、吉沢亮の“銀魂”参加組のおふざけは健在。特に、天下無敵の美少女・照橋心美の過剰な自意識演出のバカっぷりには、橋本環奈の今後の女優生活が心配になるほどだ。彼女を見た男子が、そのあまりの美しさに思わず発する擬音が「おっふ」。これが繰り返されていちいち爆笑を誘う。誰からも干渉されない静かな生活を望むのに、気が付けば宇宙規模の大事件が発生し、地球を救うハメになる斉木楠雄。この無駄なスケール、まったくやれやれ…である。どこまでも笑いだけを追求する福田監督らしい快作コメディだ。
【60点】
(原題「斉木楠雄のΨ難」)
(日本/福田雄一監督/山崎賢人、橋本環奈、新井浩文、他)
(おバカ度:★★★★☆)


この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2017年10月21日の記事を転載させていただきました(アイキャッチ画像は公式Twitterから)。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。