サービス開発がモバイル産業発展の要

山田 肇

昨日の続きで、規制改革推進会議投資等ワーキンググループについて。WGで意見を陳述したところ、構成員から「モバイル産業の今後についてどう考えるか?」という質問が出た。

モバイル産業は多様なアプリ(サービス)を提供する企業、それらをまとめてアプリストアを運営し、また、検索などの基本サービスを提供するプラットフォーム企業、通信ネットワークを提供する企業、通信デバイスを提供する企業の四層構造で成り立っている。GoogleとAppleに代表されるプラットフォーム企業は利用者個人の趣味嗜好に関わる詳細な情報まで握って四層構造の中で王者の地位にある。移動通信事業者やデバイス製造者はプラットフォーム事業者の下僕であり、日本の関連企業は下僕の地位に甘んじている。

一矢を報いるためには、わが国はサービス分野を強化すべきと僕は回答した。例えばということで、次のような説明をした。

わが国は高齢化先進国であり、高齢社会に対応したサービスをいち早く普及させれば、後から高齢化が続く国々に展開する可能性が生まれる。高齢者の健康状態を生体センサでモニターして、モバイル網で病院につなぎ、医師が指導するといったサービスを普及させるためには、生体センサの医療機器認定、診療報酬制度への遠隔指導の組み込み、といった政策課題がある。電波では、このサービスは命に直結するから、専用帯を用意したほうがよい。このような新サービスに注目して、総務省だけでなく政府ぐるみで関連規制を緩和する努力が必要である。

僕の意見に対して、国家戦略特区ワーキンググループ構成員も兼ねる委員が賛意を示してくださったのは心強い。

電波利用料の使途を見ると「IoT機器等の適正利用のためのICT人材育成」がある。生体センサを利用したサービスもIoTの応用例なのだが、人材育成プログラムはIoTサービスの基盤となる無線システムの構築に特化している。確かに無線システムを構築するビジネスも生まれるだろうが、新サービスを世の中に普及するほうが経済への影響は大きい。その観点が欠落しているからこのプログラムは中途半端である。

移動通信事業やデバイス産業としての視点だけでなく、サービスの視点も入れて電波制度改革について議論を進めないと、わが国企業は下僕の地位から脱出できないだろう。