先日、東京都渋谷区で、スタディクーポンという塾代支援の取り組みが始まりました。友人達が中心メンバーということもあり、僕も心から応援しています。
切り口が新しかったことで、新聞やテレビなどにも取り上げられ、大きな反響を得ています。
●私だって塾に行きたい。貧困家庭の高校受験生に「スタディクーポン」 どういう仕組み?
http://www.huffingtonpost.jp/2017/10/12/shibuya-study-coupon_a_23240747/●貧困世帯の中3に「塾代クーポン」 渋谷区http://www.asahi.com/articles/ASKBD4F9NKBDUTIL012.html
だがしかし、中には「塾代クーポンなんかあげて、本当に意味あるの?」という批判も事務局に寄せられているようです。
では塾代クーポンがどのような効果を子どもたちにもたらすか。解説したいと思います。
そもそもの問題意識
日本は義務教育なので、教育は無償で受けられますが、実際には受験システムが存在するため、塾などの学校外教育がそれを補完している構造になっています。
しかし、親の所得と学校外教育への支出は綺麗に相関しています。
つまり、学校外教育の格差が、学力の格差に紐づいてしまっているという状況です。
子どもは親の所得を選んで生まれることはできないので、これはフェアではありません。
そこで、塾にしか使えないお金(クーポン)を提供することで、学校外教育格差を埋めよう、というのがスタディ・クーポンに代表される塾代クーポンの取り組みです。
効果のエビデンスはある
では実際、塾代クーポンを渡すと、それによって子どもにどのような変化が起きたのでしょうか。
このグラフは、クーポン利用者のクーポン利用前と後の時点での成績を、落選者(クーポン非利用者)の同じ時点と比べたものです。
当然といえば当然ですが、クーポンを利用して塾に通った子ども達は、通塾する以前よりも成績が上がり、通塾していない子ども達と比べても成績が良かったのです。
出典:学校外教育バウチャー提供事業の社会的インパクト評価・中間報告書
あるべき社会を願う前に
「本来なら塾に行かなくても、学校教育だけで済む社会を目指すべきだ。」
そういう意見もあるでしょう。でも、いつそういう社会が実現されるのでしょうか。
数十年後に訪れるかもしれない社会を夢見て、目の前の子ども達を犠牲にすることはできません。
塾代クーポンによって、今目の前にある、アンフェアな子どもの学力格差を埋められるのであれば、そこに社会資源を充当するべきではないでしょうか。
こうした民間からの取り組みが広がっていくことを、期待してやみません。
編集部より:この記事は、認定NPO法人フローレンス代表理事、駒崎弘樹氏のブログ 2017年10月26日の投稿を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は駒崎弘樹BLOGをご覧ください。