立民党は「安保法制は違憲だ」という見解を撤回せよ

立民党の枝野代表が「私は保守だ。30年前だったら自民党宏池会だ」といったことが、ちょっと話題を呼んでいる。このごろ彼だけでなく保守を自称する左翼が多いが、ほとんどは中島岳志氏のような無学な話だ。こういうときの「保守」はバークを念頭に置いていることが多いが、枝野氏は「宏池会」と具体化したのがおもしろい。

宏池会(今の岸田派)は吉田茂に始まって池田勇人の創立した自民党内のハト派グループであり、岸信介以降の流れを右派と呼ぶとすると、宏池会は左派である。それは憲法改正を封印して日米同盟に依存する「軽武装」路線でもあった。両者は自民党内で、アメリカの共和党と民主党のように擬似政権交代をしてきたともいえる。

それで事足りれば問題はないが、枝野氏のように「安保法制は憲法違反だ」という野党がいる限り、憲法解釈が安定しない。潮匡人氏も指摘するように、2015年の5党合意では「存立危機事態に該当するが、武力攻撃事態等に該当しない例外的な場合における防衛出動の国会承認については、例外なく事前承認を求めること」と定められ、北朝鮮がグアムを攻撃しても、国会の承認がないと自衛隊は出動できない。

このような野党の立場を保守と呼ぶことはできない。バーク的な基準でいえば、1950年代から続いてきた解釈改憲は十分安定した伝統であり、それを守ることが保守主義である。このように表の平和憲法と裏の日米同盟を組み合わせた「戦後の国体」をつくったのが宏池会だった。

この国体は論理的に一貫しないが、野党が騒がない限り維持できるので、立民党の果たす役割は意外に大きい。枝野氏が本当に宏池会の伝統に従うなら、池田勇人以来の解釈改憲の伝統を保守して「安保法制は違憲だ」という見解を公式に撤回する必要がある。